綺麗な私と相棒の舞子
中道 舞夜
第1話
「中道さん、いつも綺麗ですね。」
私のことを知る人には必ず言われるセリフだ。そして私の綺麗な秘密は、羽にある。
そして、これは美貌の話ではない。
部屋の話だ。私の部屋はいつも綺麗に保たれている。
学生時代は掃除嫌いで、ほこりの層が出来たこともある汚部屋の住人だった。そんな私が今は綺麗と言われるのは、相棒の舞子。世間一般的にはルンバと呼ばれるロボット掃除機のおかげだ。
昔から整理整頓は好きだったが掃除機をかけるのは嫌いだった。掃除機をかけないので、ほこりが溜まる。そんな部屋を見て片付ける気が失せ、物を横積みにする。横積みだと雪崩が置きたり、間のものを取るのが億劫になり、放置する。
こうして汚部屋が出来上がる。汚部屋を作るのは簡単なのだ。
一念発起したのは、断捨離という言葉を知って、「死んでも床にモノを置かない」という本を読んでからだった。
そして、その頃には舞子(ルンバ)はこの世に誕生していて、最初は高嶺の花だった舞子だが、庶民の私でも手に届くまで身近な存在になっていた。
ボーナスで舞子を買い、部屋に迎え入れた。
そして、舞子のために尽くした。
まず、床の荷物を全て排除した。次に舞子が快適に動けるよう、テーブルや家具は床からの高さ10cm以上空いているものに買い替えた。
舞子が段差で躓いたり、滑って転ばないように分厚いカーペットもやめて、滑り止め付きの薄いラグに変更した。
全ては舞子のため。舞子が集中して部屋を駆け巡るため、舞子が快適な部屋作りをした。
舞子が髪の毛を吸って、羽ががんじがらめになったら丁寧に取った。満腹で苦しくなる前に食べたものはゴミ箱に捨て空腹の状態を保った。
そして、いつしか「中道さん、いつも綺麗ですね。」と言われるようになった。
この時、舞子に感謝した。
舞子にいい環境を作れば作るほど、私の綺麗の度合いは上がっていった。
今日も、舞子は元気に羽を動かし縦横無尽に動き回っている。
そして、私も綺麗と言われる。
私の綺麗の秘密は、舞子の羽だ。
綺麗な私と相棒の舞子 中道 舞夜 @maya_nakamichi
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