Secret Episode 6 平和のために。
「うんうん、なかなかに順調ではありませんか」
私は薄暗い廊下を歩きながら、幾つも並ぶ檻の中を注意深く観察していた。ここは私の工房で、日々新たな魔法の探求を行なっている。
「被験体1と2。最初は抵抗するわ、泣きわめくで、実験にならんかったもんな」
私の後ろを歩く実験補助役二人の内の一人、パルパトスが云った。
「ま、最終的には諦めて、言う通りに動いてくれる様になったから良かったわ」
実験補助役のタルナが嬉しそうに話した。
私達は今、この世界から争いを無くして平和を実現しようと、実験を行なっていた。この実験が成功すれば、魔界と聖界の問題も解決に近づく。
「被験体5と6にかけた魔法が一番効きそうですね」
私達は被験体5と6がいる檻の前で立ち止まった。薄暗い檻の奥から、堪らず漏れ出るような声が聴こえてくる。
「彼らが始めて、どれくらいが経ちましたか」
タルナが「24時間を過ぎたところです」と答える。
「ふむ。やはり魔法で痛覚を和らげてあげると良いみたいですね。被験体5は身体活性化魔法を応用した血流促進が効いていそうです」
「あとは幻覚っすよ、幻覚」
「はい。しかし、幻覚を見せ続けるのにはかなりの力を必要とします。今後、数が増えた時に現実的ではありません」
私は少し黙考して彼らに一つお願いをした。
「パルパトスさん、タルナさん。やはり環境が大切なのだと思います。こんな檻の中ではなかなか難しいでしょう。なので聖界に行って、彼らの生活を再現するに必要な情報を集めてきてくれませんか」
二人は「はっ」と返事をして、工房から出ていった。私も一緒に行きたいが、王から召集令が届いているためそちらに顔出しをしないといけない。
「はあ、面倒ですね。しかも今回は他の方も来るとか…」
魔界には魔物の他に私達、魔人が住んでいる。魔人は王とその下部組織によって順位付けをされ、上位十個体には二つ名が与えられる。そして彼らはこう呼ばれている。魔界をさらなる繁栄へと導く優れた個体、十傑と。
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