【短編】『あけ』

星野光留

意味不明なメッセージ

深夜。

のんびりとスマホを眺めていたら、友達から、たった2文字のメッセージが飛んできた。


『あけ』


今日は、1月1日。

アイツが言いたいことを察して、意図の確認のためと、挨拶のために、メッセージを打ち込んでみる。


『おめ?』


結果は、既読無視。

結局その日は、アイツの意図もわからずじまいだった。


***


後日。


「で、結局あれってあの返信で良かったのか?」


「あぁ、あれか。まぁ、いいんじゃない?」


「いいんじゃないってなんだよ」


「いやさ、俺、気づいたんだよね。俺たちって1月1日になったらとりあえず『あけおめー』って言うじゃん? でさ、『あけおめ』って『あけましておめでとう』の略じゃん?」


「そうだな」


「でもさ、なんで明けたらおめでたいのか、俺たち分かってなくね? とりあえずめでたいらしいから『あけおめ』って言ってるけど、年が明けたところでめでたくなるのって、せいぜいお年玉もらえる子どもと、その子どもに会える爺さん婆さんと、正月グッズで儲かってる企業ぐらいなんじゃねーの?」


「結構いるじゃん」


「でもさ、俺たち別にどれでもないよな?」


「………………………」


「だから、別におめでたくないんだよ。俺たちは年越しを祝う必要がない。だから、あの『あけ』は、『年があけたよな、でも別にめでたくねぇよな』って意味」


「そうか。わかったよ」


俺は思った。

コイツ、めんどくせぇな、と。


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