第2話 到着

 駅を降りて車で移動が可能な限界点までタクシーを乗り継ぐが、まだまだ徒歩にて進まなければならなかった。


「お客さん、ここからはもう行ける道はないですねぇ。大分前に、この辺で大規模な土砂崩れがあったんですけどね、それのせいで今はまだ国道以外のインフラ整備は進んでなくてですねぇ、普通車ではここまでです」


 気さくな運転手にそう言われて、二人はその場でタクシーを下車し目標だろう方向を眺めて見た。その光景は送られてきた画像と全く同じ画拡で撮られた風景が広がっている。違いとしては、画像の木々は無残にも枯れ果て恥ずかしそうに山肌をも露わにしていたが、現在は威風凛々とした緑葉が風をなぞるかのように揺らめいている。


「どうやらこの写真も、ここらへんから撮ったみたいですね」


 二つの山脈が交差する、その双方の末端である二つの山が地平線に立ち塞がり、メールにて送られてきた画像などの信ぴょう性が目前に物語ってきた。本文の詳細にはその山々の麓に目的物がそのままで鎮座しているとのことである。


「あ、運転手さん。私たちの目的地ってここからだと大体何キロぐらいですか?」


「・・・ああ、えっとねぇ、以前はあの山の下、大きな車両通行帯トンネルがあってねぇ、その中腹までとかなら・・・大体、二、三キロってとこかな?」


「ありがとう、運転手さん」

 お互いに手を上げて、タクシーは来た道を帰って行く。


「・・・ってことは、そこから送られてきたGPSの航空写真だと・・・四、五キロぐらいってとこですかね」


 桐嶋はこれからの道中、想定される若干の苦渋に正しくニガ汁を飲むような顔をする。


「まぁ、ちょっとしたハイキング気分で行きましょう」


「・・・そうですね」


 一キロ程、サバンナのように何も無い道を山間へ向けて歩いていると、前方から一台のジープが砂煙を背後に上げながらこちらへと走ってきた。




「榊原さん・・・ですか?」


 政府の役人らしき人物が山道に適した車で出迎えてくれた。それに乗り込み、安堵の表情で悪路に揺られながら進んでいく。



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