【お題で執筆】10/羽/命令
夏目 漱一郎
緊急事態!
成田空港を離陸した10人乗りの小型民間航空機が、上空二千メートルで突然のエンジントラブルに見舞われた。
「たいへんだあああ――――――っ! このままだと墜落するぞ!」
『皆さん、緊急事態です! この飛行機はもうすぐ墜落します! この機にご搭乗のお客様は、直ちにこの機に搭載されているパラシュートを装着して下さい! パラシュートの数はこの機にご搭乗されているお客様の人数分用意されています。くれぐれも慌てずに落ち着いて行動して下さるようお願い致します!』
飛行機内はパニックとなった。全ての搭乗客は、添乗員の支持に従い、次々と畿内に並べられたパラシュートを身に着けていった。その結果……
「あれ、なんか一個足りないんだけど……」
「えっ、ホントですか?」
「ええ、十人乗っているのにパラシュートが九個しか無いよ」
「いやあ~、困ったなあ。急いでいて載せ忘れちゃったのかな……」
「いや、載せ忘れちゃったじゃないよ。こういう時はどうすんの? 添乗員さんの分を私達に回すとか……」
「それは勘弁してください。添乗員用のパラシュートは、ちゃんと決まっているので。ほら、ここに名前書いてあるでしょ?」
「名前なんてどうだっていいんだよっ! アンタが載せ忘れたんだから責任とって、こっちに一個寄越せってんだよ!」
「なんですか、大声出して。それは今話題のカスハラじゃないですか。ダメですよ、今、そういうの色々と問題になっているんですから」
「じゃあ、どーすんだよ! 飛行機落っこっちまうだろっ! 早くなんとかしてくれよ!」
「わかりました。それでは、何か代わりの物を探してみましょう」
飛行機のコックピットからは、先程からずっと異常を知らせるアラームが鳴り止まない。このままでは本当に機体が山中に激突してバラバラになってしまうだろう。
「もう時間が無いよ! そっちは何か見つかったか!」
畿内にあった客の荷物を勝手に漁る添乗員。その中から何か見つけたらしく、嬉しそうに叫んだ。
「あった、これだ!!」
「何を見つけたんだ!」
「いやあ~これが見つかったらいいなと思っていたんですよね」
それは、製図とかを書く時に使用する消しゴムのカスを払う鳥の羽みたいなものだった。
「念の為に訊くが、それがいったいなんの役に立つというんだ」
「仕方がないでしょ。文句があるなら、こんなお題を出したカクヨム運営に云ってください。確かに、これ一つでは何の役にも立たないかもしれません。しかし! これが二個だったらどうです?」
添乗員は『鳥の羽みたいなもの』を両手に持って、それを上下にパタパタと羽ばたかせた。
「二個あったって役に立たね―――――よっ! そんなので空が飛べるかっ!」
「そんなのは、やってみなければわからな……」
「やらなくてもわかるよっ!」
* * *
「しかし、困りました」
「何が困ったんだよ」
「そろそろ、最後のお題『命令』を使ってオチを考えなければなりません」
「そんな事よりパラシュートなんとかしてくれ!」
「まあ、このままなら放っといても飛行機はオチますけど!」
「いい加減にしなさい!」
「じゃあそれ、『命令』という事で」
「いや、苦しいって!」
ちゃん ちゃん!
【お題で執筆】10/羽/命令 夏目 漱一郎 @minoru_3930
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