「じゅうななさい」ハナムケノハナタバ
音無 雪
ハナムケノハナタバ
「ドラムロールっ」
暗転した舞台で司会のお兄様が叫びます。
合わせるように鳴り始めるドラムロール スポットライトが左右に行き交います。
派手な演出ですね。
「第一回 結婚披露ショーっ」
ヲイ 第一回とは縁起でもありませんよ。一回だけでよろしゅうございます。
拍手と笑い声とともに明るくなる会場 貸し切りとなったレストランに来ております。
本日はご結婚されたおふたりを祝福する会にお招きいただきました。
昨今の風潮でしょうか 結婚式は執り行わず入籍だけで済ませたおふたりでございますが、友人知人の方々がそれを許さなかったようでございます。
披露宴でもなく親族列席もなしの「結婚披露ショー」の開催となりました。いきなり二次会と言ったところでしょう。
先ほどから新郎側の会社同僚さんがプレゼンテーションを行っております。我が社自慢の商品として新郎さんを紹介しておりまして、スライドやビデオなどを駆使してこれがなかなかの出来映えでございます。
新婦さんの知らなかったことまで公開されているようで邪魔に入ろうとする新郎さんが羽交い締めされていますね。
「おまえら仕事もこのくらい熱を入れろよ」
おそらく先輩社員さんなのでしょう。呆れて野次を飛ばしております。
終始笑顔の所を見ますと良い職場なのだと伝わって参ります。愛されておりますね。
§
「幸せなふたりに向かってひとりずつ御言葉を頂きましょう。ただし『本日はおめでとうございます』などとベタな挨拶は禁止です。今なら何を言っても幸せボケのふたりには文句は無いでしょう。本音ぶつけるチャンス到来っ さあ張り切って参りましょう」
煽るのがお上手でございますね。
お泊まりデートのアリバイ作りに協力したご友人
「私の時には手伝ってよねっ」
言の葉を贈り終えると会場中央に用意された大きな花瓶に一本の花を生けます。
少しずつ一輪ずつお祝いの言の葉が花瓶を彩って参りました。
笑いの絶えない雰囲気のまま最後の方にマイクがまわります。綺麗な女性ですね。
「このようなイケメンの幼馴染がいるとは聞いていません。独身男性の少ないわが社で余裕で居られたのはこれが理由だったのですね。騙されました」
直属の上司の方のようでございます。なかなかテンションが高いです。
そんなことが言える雰囲気の職場なのですね。素晴らしいではありませんか
そして上司さん 共感いたします。じゅうななさいの小娘でよろしければお話をいたしましょう。
「上司である私を差し置いて寿退社とは極悪非道言えるのではないでしょうか これを許して良いのでしょうかっ」
祝辞と言うよりも演説に近いのでは無いでしょうか
拳を振り上げて会場を沸かせております。一瞬で雰囲気を作り出すとはカリスマ性がございます。
会場のあちこちから拳を突き上げる姿が見られます。意外と女性が多いですね。
おっといつの間にか私も拳を突き上げておりました。 隣の殿方に笑われてしまいましたよ。てへっ
「最後くらいは上司の言うことを聞きなさい。私から最後の業務命令です」
はっきりとした物言いに会場がふと静かになりました。
全員が上司さんに注目しています。妙な緊張が会場を包みます。
上司さんゆっくりとマイクを下ろして新婦さんへ語りかけます。
「しあわせになりなさい」
静まり返った会場
「はい」
うぉーーー
きゃぁぁぁ
花嫁さんの声をきっかけに割れるような歓声と拍手
最後の一輪が加わりはなむけの花束が完成致しました。
この世界は優しさで満ちております。
「じゅうななさい」ハナムケノハナタバ 音無 雪 @kumadoor
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