その出遭いは出逢いへと変わり、世界を彩づかせた
- ★★★ Excellent!!!
母親の仕事の都合で転校してばかりの生活を送る少女、つばめ。今度の転校先である乃寿美高校も所詮は通り過ぎるだけのものだと達観し、いつも通りひとりで過ごすつもりでいたのだが……もう5月だというのに探偵部なる部活の募集をしていた眼鏡男子に好奇心をそそられ、つい声をかけてしまった。そして始まるのだ。宝物のような4ヶ月間が。
つばめさんはある事情からずっと自分の意思を抑え込んできました。そこで出遭ったのが奇人な眼鏡男子、コードネーム“アニ”くんです。彼女の灰一色だった世界は彼という奇しき色が差し込まれ、一気に彩づきます。それによって彼女の心情が大きく動いていく描写は鮮やかのひと言なのですよねぇ。
そして本作はふたりの視点切り替え式で進行するのですが、つばめさん視点は物語を主観的に語り、アニくん視点が客観的に見せる役割分担していることも特徴的ですね。両者が並ぶことで物語がより鮮明になる。この構造にも目を奪われました。
夏に終わることが定められたふたりの物語、エンディングが気になります!
(「忘れがたし夏の恋」4選/文=髙橋剛)