「月が綺麗ですね」と告白されたときのベストアンサーを考えようと思う。
izumi
「月が綺麗ですね」と告白されたときのベストアンサーを考えようと思う
ソファーに寝転がってスマホをいじっている妹の前を横切ったとき──
【"月が綺麗ですね"って告白されたときのベストアンサーって何だと思う?】
──という文言をLINEで送ってるのが見えた。
「え、お前……誰かに告られたの?」
「……ちがうし。ってか勝手に人のスマホ見ないでよ」
慌ててスマホを隠す妹だが、もう手遅れだ。
「普段クールでしかめっ面なお前が、顔赤くなってるってことはもう絶対ガチじゃん……まったく身体は正直なもんだ」
「……うるさい」
「にしても今どきそんな古風な告白をしてくるやつもいるんだなー。まあそういう恋愛相談はお兄ちゃんに任せとけって」
「…………じゃ、付き合う場合は?」
と、意外にも素直に聞いてきた。
「そうだな。まあ"月が綺麗だね"のアンサーは……"だって君と見てるから"とか結構イケてる──ってなんで引いてんだよ!」
……妹の顔がガチで引きつっていた。
「……ごめん。普通にキモすぎて無理だった」
「謝ってんの? ねえそれ謝ってんの? ちゃんと謝ってよ、ねえ」
──とは言いつつも。
真剣に考えたアンサーだが流石にキザなセリフではあったので、むしろそういうコミカルなりアクションをしてくれた方がありがたくはある。
というかむしろ、それを待ってたまであるな。
さすが我が妹。
兄のギャグセンをしっかり理解している──
「うわやば、蕁麻疹出てきた……」
「…………え、さっきのガチ?」
妹の腕を見ると、綺麗な真っ白な素肌に赤い斑点がいくつも浮かんでいる。
「え、まじじゃん、やば、え、そんなに? ねえそんなにお兄ちゃんのアンサー生理的に受け付けられなかった?」
「……ほんとごめん」
「謝るなよ! なんか本当に気を遣われてるってなっちゃうから!」
「家族として、可能な限り受け付けようとしたんだけど……身体は正直みたい」
「やめて! それ以上は惨めだから! ほんとはもっと別の答え浮かんだんだって! ほら、"君の方が綺麗だよ"とか、もっといいアンサーが……!」
「もうやめて……もっとひどくなっちゃうから……」
両手で自身の肩を抱いて悶える妹。
……俺のセンス、そんなに気持ち悪かったんだ。
……普通に傷つくわ。
「……じゃあ、告白を断る場合は?」
「まだ続けんの!? もう怖くて何も答えられないよ!?」
「……いいから教えて」
「わ、わかったって……そうだな……"手が届かないから綺麗なんだよ"とかは……どうでしょうか?」
「……悪くないと思う」
「ああよかった……だよね! やっぱそうだよね! 正直これは自分でもかなりイケてると思ってて──あー嘘だめっちゃ蕁麻疹出てるわ! あー駄目なんだ! やっぱ駄目なんだ俺のセンス!」
「……ほんとにごめん」
俺のセンスってそんなに終わってたんだ……。
「……まあ、普通にセンスは終わってると思うけど、でも家族としてお兄ちゃんのことはかなり好きだよ」
「うん全然嬉しくない。蕁麻疹出ながらそんな事言われても全然嬉しくない」
「心ではちゃんとお兄ちゃんのこと受け入れてるから。身体が拒絶してるだけで」
「生理的に受け付けてないじゃん……」
「多分これから月をみるたびにお兄ちゃんのことを思い出すよ」
「浮かび上がる蕁麻疹と共に?」
と、そこで妹のスマホからLINEの着信音が鳴った。
「……なっちゃんから、さっき送ったやつの返信返ってきたかも」
「……一応言っとくけどな、俺の回答で拒絶反応を見せてる時点で、多分どんな回答も受け付けられないと思うぞ」
「……そんなことないって。なっちゃんはいつもいいアンサーしてくれるし」
そう言って、妹と俺はスマホを覗き込んだ。
【"月が綺麗ですね"って告白されたときのベストアンサーって何だと思う?】
【それ、月じゃなくてフリスビーだよ?】
なっちゃんハイセンスすぎるだろ。
「月が綺麗ですね」と告白されたときのベストアンサーを考えようと思う。 izumi @Tottotto7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます