魔剣クロノスを得るために! Ⅵ

日々菜 夕

第6話

この物語はフィクションです。登場する人物。地名、団体名等は全て架空のものです。







 隣の村からの救援要請を受け――


 私と先生は早馬にまたがり隣の村に向かいました。


 聞いた話によると、相手はアンデット系らしく。


 護衛として雇われている戦士だけでは戦力不足との事でした。


 当然と言えば当然なこと。


 なにせ相手はすでに死んでいるのですから。


 単純に切ったり叩いたりしても効果が薄いのです。


 一般論で言えば――根本的な稼働理由である邪神メダスを倒すか、光の女神であるテイア様の力を借りるかの二択。


 もっとも、根本的な原因排除は荷が重すぎるので。


 必然的にテイア様の力をお借りして戦うのがベストとなるわけですが……


 果たして、先生と私。


 二人だけで対応しきれるのか少し不安ではあります。


 先生は、ともかく。


 私は、実戦経験がないのですから。


 せいぜい足を引っ張らないようにと思っていると。


 隣の村について早々――馬から降りた時でした。


 余裕の笑みを浮かべた先生が私に、優しく語りかけてきました。


「安心しろ、ロゼット。お前は、俺の一番弟子だ。一人でもじゅうぶん戦える」


「え?」


「俺は、重症者の治療を優先しながら戦う。後は頼んだぞ!」


 そう言うのが早いか。


 先生は、村の中へと走っていきました。


 阿鼻叫喚、地獄絵図と化した村でありながらも迷いのない後姿。


 おそらく探索魔法で人と敵の位置を把握しているのでしょう。


 ならば私の役目は、村に入ろうとする魔物の群れの足止め!


 先生の期待に応えるためにも、粉骨砕身の思いで頑張るしかないのです!


 魔剣クロノスの失敗作の強化版を鞘から抜き。


 正眼の構えで魔物の群れを見すえます。


 数にして30体以上いるでしょうか?


 その身を骨でつなぎとめた骸骨――錆びたり、所々欠けたような鎧をまとった骸骨剣士が一番多く。


 次に、死臭を放ちながらうごめくオオカミや熊型のゾンビ。


 最後方に控えるのが、厄介そうな魔法使い。


 ぼろきれのようなローブを目深にかぶりながらも――


 私を、見すえる怪しく光る赤い眼光。


 おそらくは、リッチのたぐいでしょう。


 ごくりと、かたずをのんで黄金の剣身に魔力を注ぎ。


 得意な幻術魔法で相手を錯乱させます。


 私との距離は、まだまだあるはずなのに虚空に向かって剣を振り下ろしたり。


 噛みつこうとしている様子から――私の幻術魔法が相手にも有効だと分かります。


 魔法使いにいたっては、味方であるはずの魔物に攻撃魔法を放っている。


 ――よし!


 ここまでは、教わった通りの展開。


 先ずは一番厄介そうな魔法使いを仕留めようと力ある言葉を並べます!


「光の女神テイアよ! 我が魔力と共に冥界への扉を開け!」


 昼間だというのに、まるでそこにもう一つの太陽が生まれたかのような輝きが剣から解き放たれ――


 リッチを消炭に変え、あの世へと送り届けます。


 次は、その他大勢を一網打尽にするべく範囲攻撃を仕掛けます!


「光の女神テイアよ! 我が魔力を光の矢に変え敵を打て!」


 絨毯爆撃の様に降りしきる光る矢の雨は、瞬く間に骨どもを無力化させていきます。 


 しばらく様子を見ていましたが……


 どうやら追撃は、なさそうです。


 ならば、私も――村人達の救出と治療にまわるべきだと判断し。


 村の中に突入。


 壊れたり燃えている建物を横目に、出くわした魔物は聖なる光をまとわせた剣で一刀両断したり。


 魔法で消炭にしたりして先生を探します。


 すると、村の中央広場で戦っている先生を見つけました。


 相手は、先ほど倒した魔法使いとは明らかに別格。


 手にした杖も怪しく輝く宝石の埋め込まれた物なら。


 黒い衣装なんて、まるで金品を見せびらかすゲスな貴族の様に宝石がちりばめられています。


 おそらく、見た目だけではなく相当な魔力が込められた上等な物なのでしょう。


 頭だけは頭蓋骨むき出しですが……


 その骸骨頭がしゃべります。


「いくら加勢が来ようとも。その様な模造品で我が朽ちる事なぞありえん」


 ――え!?


 あまりにも普通に――


 それも生者のようにしゃべるものだから一瞬幻術のたぐいかとも思いましたが。


「嘘か本当か知らんが、メダスの右腕らしい! 油断するな!」


 先生の言葉で身を引き締め、剣をかまえます。


「はいっ!」


 おそらくは邪神教の信者だった者――


 それも高位の者がリッチと化したモノなのでしょう。


 並の魔法使いならば先生が圧倒しているはず。


 それなのに戦いが長引いているとしたら何か理由がある。


 自称なのか本当なのか分かりませんがメダスの右腕が右手で持つ銀色の杖を軽く掲げると!


 辺り一面に強そうなアンデットのたぐいが地面から湧いてきます!


 なるほど――


 先生は、これらを相手にしながら――あのリッチと戦っていたのでしょう。


 いくら先生が優秀でも、この数を相手にし続けたら消耗し。


 いずれは敗北という形での決着をむかえてしまうでしょう。


 ――そうしないためにも!


「先生! ザコは引き受けます!」


「あぁ! 任せた!」


 私が、力ある言葉と共に光る槍の雨を降らせれば――


 先生は、一瞬でリッチに肉薄し光輝く剣を横に一閃。


 リッチが慌てて後ろに飛び距離を取ろうとするが――


 その刀身は、触れずとも聖なる光の刃は深々とリッチの身体を引き裂いていました!


 さすが先生!


 アンデットに対して的確にダメージを与える聖なる光の刃。


 それを伸ばすことで、相手との間合いを変化させての一撃。


「なっ!?」


 驚いた、声を出すリッチに対し。


 私には見えない剣速で、滅多切りにしていく先生。


 ここが決め所と判断した私は、先ほど弱いリッチを塵に変えた魔法を最大出力で放ちます。


 なんとなくですが、最後に――


「この私が、こんなところで……」


 とか言いながらリッチは消えて逝きました。


「さすがだなロゼット。よくやった」


 少しばかり子供扱いされている気もしますが……


 こうして、頭を撫でられながら褒められるのは大好きだったりします。


「先生こそ。間合いが伸びるなんてすごすぎです!」


「まぁ、相手が油断してくれて助かったってのも大きいだろうが。アンデット系には必殺になりうる業だからな。身に着けて損はないぞ」


「はいっ! 頑張って身に着けます!」


「さてと。それじゃあ、消火と、ケガ人の治療をして回るぞ」


「はいっ!」


 こうして初めての実戦は大勝利で幕を閉じました。


 のですが……


 後日。


 私達のもとに、王都へ来いという趣旨のお手紙が届きました。


 なんでも、あのリッチ。


 本当にメダスの右腕だったらしく戦果に対し褒賞をくれるとかいう事らしいんだけど。


 正直なところ、嫌な感じがするのです。


 先生も、


「最悪の場合。二人そろって最前線送りだろうな」


 とか、不吉なこと言ってくれちゃってるし。


 かと言って、お手紙を無視するという選択肢は……


 それはそれでまずい気がする。


 なにせお手紙を持ってきた人が偉い人とつながりのある人物だからだ。


 下手に機嫌をそこねれば廃村に追い込まれる可能性もある。


 村にとっての敵は、邪神メダスだけではないのだと――


 骨身に染みる思いをさせられたのでした。

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魔剣クロノスを得るために! Ⅵ 日々菜 夕 @nekoya2021

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