初めてなの
第5話
学校にたどり着いた時、私はくたくただった。
「しぃ?大丈夫?どうかした?」
「……きくのぉ!」
「伊達君と仲良しなのね」
「仲悪いんだよ!」
相変わらず菅野くんは遅刻だった。会いたいのに。
なんで伊達君がモテるの?どこがいいの?ただの意地悪野郎じゃん。
「……すがのくん、」
「本当に菅野くんが好きだね。
脅されて付き合ってるって勝手に思ってた」
「好きだよぉ。完璧だもん、イケメンだし。
タイプとは確かに違ったけど、むしろタイプが菅野くんにより始めてるくらい好きだよ」
菊乃は興味なさそうに英語の本を読み始める。部活の課題らしい。
落ち込む私の携帯がなって『ギリセーフ!』って、菅野くんから。
よかった、今日は間に合った。自分のことのように嬉しい。しかし、続きを読んで落胆。
『一時間目は数学だるいから保健室いくわ』
……どうして?!せっかく来たなら出なさい!!というか会いにきてよ!
そして私はいたって真面目なので授業をしっかり受ける。
……どっかのどいつには「そんなに真面目に受けてるのになんで頭悪いのー?」とか言われそうだけど。
はぁ。思い出したらとっても嫌な気持ちになってきた。
菅野くん、寝てるのかな。
まぁ、毎日普通の高校生とは思えない生活だもんな。
はやく休み時間にならないかな。
お弁当あげて喜んでもらって幸せな気持ちになる。
そしてデキる女だと思われたい!
四時間目が終わってやっと菅野くんに会える。
2~4時間目は私が宿題やってないせいで五分休みにあえなかった。
「すがのくんっ!!」
教室まで来る前に廊下で待ってた私に少し驚いた様子の菅野くん。
思わず抱きつきかけておっとと、と思ってやめた。
「しいか。なんか、元気だな」
「うんっ!げんき!やっと菅野くんに会えた!」
いつもなら言わないけど、なんか今日は一日が長かった。早起きしたからかな。
「あのねっ!これつくったよ!!」
私がお弁当箱を渡すと、おお!と喜んでくれる。
「すげぇ!ありがとな!」
「うん!」
「じゃあ、これ。
多いけど、俺のをしいかが食え」
……あ!そうか!!
菅野君はいつも自分のお弁当は自分で作ってるんだから、これじゃなんの意味もないじゃん……!
しっぱい。
「ごめんなさい……」
「ん?なにが?いただきまーす」
しかも、お弁当は中身がぐちゃぐちゃだった。
私は恥ずかしくなってあわててお弁当を取り上げる。
「やっぱうそ!私が私のためにつくった!」
「いや、どう見てもこれは男用のお弁当箱だろ」
なにも気にしてないフリがなんでこんなに上手いんだ。
やっぱり菅野君は完璧すぎる。
「あ、そーいや椎夏、いつもより髪の毛くるくるだな。こーゆーの使ったの?」
コテのジェスチャーを笑顔でする菅野君。
おかずを一口食べるたびに「うめぇ!」と叫ぶ菅野くん。
「菅野くん、卵焼き好きだった?だいじょぶ?」
「すき。
つーか、食べ物は全部好きだよ。
俺はしょっぱいのが好きなんだ。
すげぇな、よく分かったな」
こないだ一口もらったのがしょっぱかったから。
いつも、私は購買で菅野君が一口くれる。
パンばっかりだから成長しねーんだって。
……なんか私、ダメだなやっぱり。
完璧?マイだーりん 斗花 @touka_lalala
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