第24話 真夜中の感謝
目が覚めた。
びっくりするくらい周りは静かだ。もう夜の真っ只中らしい。
なんだかそのまま眠る気にもなれなくて、布団から出て立ち上がる。
昼間に比べたら身体が軽くなっていた。
部屋を出て、階段を降りる。蘭から冷蔵庫のものは何でも使っていいと言われていたから、グラスを取り出して牛乳を注いだ。
——身長を伸ばしたいから、という小学生の様な理由は秘密にしていて欲しい。
スマホの電源をつけて、Safariを開く。数日前からそのままにしていた、チョコの作り方のサイトを開いた。
今時逆チョコなんて、不審がられるだろうか。そんなことないと信じているけれど、やはり心配してしまう。
俺がチョコ作りを成功する頃に、柊の体調は治ってるかな。
体調が悪い時に無理矢理渡したくない。
リビングに座り込んで悶々とする。本当にこれでいいのだろうか……。
「あれ、流星?」
「っ⁉︎」
急に声が響いたと思ったら、入り口に蘭が居た。
「な〜に、チョコのお悩み?」
スマホの画面を覗き込んでにやりと笑う蘭。
「……蘭、折り入ってお願いがあるんだが」
「はいはい、チョコの作り方教えて、って言うんでしょ? 全然いいよ〜」
「……」
流石、蘭だ。何も言ってないのに分かってくれる。
スマホを見たからかもしれないけど、彼女には敵わない。
「本当にありがとう。恩に着る」
「そんな突然素直になったら照れるじゃんっ」
ぱたぱたとキッチンへ走り、早速材料を確認してくれる彼女。とても頼もしく見えた。
「足りない材料明日買うから、二人の体調治ったらうち来て。全部指南してあげる」
「ありがとう」
蘭が居なかったら、俺は今頃どうなっていたのだろう。チョコを作ることさえも諦めていたのだろうか。
やっぱり人は一人じゃ生きていけない。誰かと共に信頼し合える人が欲しい。
そうやって人は集まっていくんだな。
「……ありがとう」
また小さく、向こうでメモをしている蘭に呟いた。
◇◆◇◆◇◆
色々ネットを漁っていたら、リビングで机に突っ伏していつの間にか眠ってしまっていた。
気づくと夜はとっくのとうに明けていた。
くっきりとしない視界でキッチンの方を見ると、柊と蘭が何かしている。動く気にもなれなくて、柊を見つめる。
改めて見ると、彼女の顔は美女といえるほど整っていた。
澄んだ瞳に長い睫毛、真っ直ぐな鼻筋。口角の上がった唇に少し赤い頬。
細い髪は、熱で暑いからなのか高いところで一つに結えられている。
話を聞いている間に見せるその屈託のない笑顔は、隣にいると瞬間的に相手も笑顔にさせてしまう。
——そんなところを好きになったのかな、俺は。
これからの未来にこんな幸せを求めてはいけない。幸せっていうのは、何処からか突然訪れるもの。待ち望むものじゃない。
でもそんな運を手に入れられるような、柊に釣り合う男になりたい。こんなに綺麗な柊と一緒にいても文句を言われないような男になりたい。
そんな決心と共に、どこか幸せな気持ちでもう一度眠りについた。
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【リレー小説】ホワイトなバレンタイン。——音畑流星Side こよい はるか @PLEC所属 @attihotti
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