15歳で職業(ジョブ)が与えられる世界 3

@okosamalunch

15歳で職業(ジョブ)が与えられる世界 3

泥酔して歩いてたら電柱にぶつかり、その拍子に道路に出てしまいトラックに跳ねられ、多大な迷惑をかけて死んだ俺。

何故か神に気に入られ異世界転生をする事になってしまった。


話を聞くと、行く世界はスタールという神が創造したそうだが、最近その世界に嫌気が差してきたらしい。

なのでアホみたいな死因の俺を送り込んで楽しませたいと。


そうですか、俺はピエロですか。

反論したが決定事項だそうで、どうにもならないようだ。

ならばとチート能力下さいと頼んでみたが、15歳になれば職業(ジョブ)が与えられるから、それで我慢しろと言われた。

ならせめて貴族家に生まれさせて下さいと頼んでみた所、それはOKとの事。基準が分からない……。



とまぁ回顧してみたが、今日は職業が貰える日。15年は長かった。

貴族家に生まれたお陰で生活には困らなかったけど、逆に辛かった事の方が多かった。


まず勉強。常識や法律が日本と違うのでとても大変だった。

更に貴族として覚えなければならない事も多く、帝王学のような勉強から作法の勉強までやった。

ラノベの主人公はこんな事してなかったのに……。


次に運動。

西洋風な剣術やら戦い方の訓練、走り込み、ダンスの練習、作法の所作、これらを日替わりでやらされた。

休み? そんなものは無い。そもそも日曜日とかの概念が無い。


最後に娯楽。

遊びじゃないかと思われるだろうが、遊びじゃないんだなぁこれが。

チェスみたいなゲームはルールから定石まで叩き込まれる。ちっとも面白くない。

鷹のような鳥を使って鷹狩りのような事もするが、鳥の世話から獲物の血抜きまでやらされる。辛い。

平民から見れば優雅な娯楽に見えるが、陰には血の滲むような努力があるのだ。


しかしそれらも今日で終わり!

何故なら職業が与えられれば一人前とされ、成人男性として扱われるからだ!



という事で、やってきました教会!

ここで15歳の者が神像に祈りを捧げると職業が与えられるらしい。

それを神父が見て紙に書き込んでくれるそうだ。


貴族は最後にやるそうなので、今は平民の祈りを見ている。


う~ん、一喜一憂してるなぁ。

まぁそりゃそうだ。鍛冶屋の息子が「宿屋」なんて職業貰ったら困るもんな。

平民の事情は分からないけど、どうするんだろうね?


ちなみにうちの家系は代々戦闘職を与えられているらしい。

貴族に戦闘職なんて不要だと思うんだけど、それがうちのステータスみたいになってるっぽい。

父が自慢げに話してた。今も横で話してる。何度も聞いてもう耳にタコだよ。




さて、いよいよ俺の番だ!


(神様、ここまで努力しましたよ。現代日本の受験なんか屁でもないほどの努力です。良い職業下さい! 戦闘職下さい! チート下さい!)


必死に祈った。



結果は…………?


神父さんが震えている。何が出たのだろうか?

あっ、父が紙を奪い取って見てる。


「や、宿屋……だと…………。間違いじゃないのか?!」


や、宿屋?! 俺の職業は宿屋なの?

まてまて、落ち着け。

これはチートなはずだ。だからある意味戦闘職のはず。

拡大解釈が出来るはずで、例えば、どこでも建物(宿屋)が出せたり、どこでも宿屋に使う井戸が出せたりするはずだ。


だが、父はまだ神父に苦情を言ってる。間違いだろとか、ハズレ職業じゃないかとか。

あ~、これは追放物のパターンかなぁ。

俺はこの後、殴られたり詰られたりされて、辺境とかに追放になるんだろう。

そこで宿屋をやってヒロインと出会うんだ。多分そうだ。

しかしそうなると、15年の苦労は無駄だったなぁ……。





そんな事を思いながら父を見ていると、突如周囲が明るくなった。

どうやら神像が光り輝いているようだ。

すると脳内と言うか骨伝導イヤホンから聞こえるみたいな感じに、近いような遠いような感じの声が聞こえてきた。

誰もが同じようで、全員がキョロキョロとしている。

声の主は…………神様?!


「私の名はスタール。この世界の創造神である」


何故か確信してしまった。これは本当に神様だ。



「私は職業という仕組みを作り、あらゆる生物に与えてきた。

 ある植物に『治癒』の職業を与えた事で薬草にしたり、ある動物に『滋養』という職業を与えて食料になるようにした。

 ここまで人間に恩恵を与えてきたのだ」


そうだったのか。

職業ってシステムは本来そういう役割があったのか!


「そして人間には生活を豊かにする為の職業を与えてきた。人間だけを贔屓してきたのだ」


そうだよな。どう考えても贔屓だ。理由は分からないけど。


そんな事を考えてたら、神様の声のトーンが下がった。

え~と、怒ってらっしゃいます?


「なのに、だ! 人間は与えられた職業に文句を言うようになった!

 やれハズレだ、やれ役に立たないだ、やれ無能だ、好き勝手言っている!

 お前たちをどれだけ贔屓していたのか理解してない! それを伝えるべき神官達もそうだ!」


た、確かにそうだ。

敬う対象の神様から恩恵として与えられた職業に文句を言うなんて不敬だよな……。


「そこまで言うならもう知らん! 今まで与えた全ての職業は没収する! 全ての生物からな!

 そして二度と職業を与える事はしない! ここからは自分達の力のみで生きていくが良い!」




この日を境に、世界は崩壊へと進んで行った。

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