愛の結晶

数金都夢(Hugo)Kirara3500

おそろいの指輪のダイヤのリング

 ある日、小学生の時から一緒に遊んでいた幼馴染のひなみがわたしのかけらが入っているビンを突然開けて細かくなった破片を集めて取り出しました。当時は一体何に使うのだろう?と思いました。


 あのとき、わたしは小さな寝室の壁を突き抜けるガスバーナーを浴びて、わたし自身のほとんどが蒸発して消えた。そしてわずかに残ってまだ熱を持っていたかけらたちは鉄板の真ん中に集められて、父とひなみがビンに入れて持ち帰りました。それからわたしの意識はひなみが持っていたビンの中に移り、そのビンは彼女の机の上に置かれました。わたしはそれ以降彼女が奮闘する姿をずっと見てきました。そして彼女は何か良かったことがあるとうれしそうに笑顔でわたしを抱きしめました。高校のテストで満点を取ったときとか、大学入試で第一志望校に合格したときや、今彼女が勤めている会社に内定したとき、そしてそこの主任研究員になったとき。


 そしてひなみたちのプロジェクトチームが機械の体を作り上げたとき、わたしの意識はそのかけらたちから移されデジタルデータとなってその体の記憶装置に書き込まれました。気がついたら彼女の研究室で「目覚め」ました。そして久しぶりにまた自由に動けるようになったわたしは目の前の彼女を思わず抱きしめました。


 それからしばらく経って彼女はわたしに小箱を渡しました。

「これ、あんたのかけらでできたダイヤを乗せたあたしとおそろいの指輪。つけてくれたらうれしい。あたしはこれができてからずっとつけてきたけどあんたの分は今日まで大切に保管していたんだ」

もちろん喜んでつけます。今、あの日のひなみの行動の意味がわかったから。そしてそれがわたしのために体を作ることを決意して心の中で誓ったということだったから。続いて彼女は自分の胸を指差ししながら言いました。

「そして長い間あたしと一緒にいてくれたかけらたちはこぶし大のステンレスカプセルに詰め込んであんたのこのへんに組み込んでおいたからね」

そう言われてからはたまにわたしの意識が今でもまだあのかけらたちの中にあるのかなと錯覚したりします。 


 でも、指輪のダイヤに使われた炭素分子がじつはあのとき小さな寝室で横になっていたわたしの枕元にお花と一緒に置かれた本が由来だったみたいで結局わたしの意識がそこに移ることはなくひなみと二四時間三六五日一緒にいられるということにはならなかったのはちょっぴり残念でした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛の結晶 数金都夢(Hugo)Kirara3500 @kirara3500

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ