10年後の今日、星が降る丘で待っている~カクヨムコン10エッセイ~
秋犬
縛りシバラレ
構想と製作の経緯(ネタバレあり)
まずは『縛りシバラレ』をお読みくださりありがとうございました。
【縛りシバラレ】
https://kakuyomu.jp/works/16818093089227480301
ここからは制作中の話や裏話を少し書いていきたいと思います。全部読んだという前提で書いていきますので、まだお読みでない方は本編を楽しんでからお願いします。
まず、構想として「ホラー長編を書こう」というところからスタートしました。「バディものが流行ってるから、とりあえずバディにしよう」ということでまずは主人公のキャラクターから考えたのですが……ここが一番紆余曲折がありました。
何らかの怪異と対決するという役柄のため、何らかの神の加護を得ているみたいなキャラクターがいいよなあと最初に出した案は「盤を用いて本格的に占いをする、女神様に気に入られたドM男とその後輩ちゃん」でした。で、「本質はMなのにイニシャルはSだらけ」ということで仮称が「佐野祥悟」ということでした。
本編をお読みになればわかると思うのですが、本編の佐野君に残された要素は名前と「占い(?)」しかありません。最初は八卦とか使って結構本格的な占いをさせようと思っていたのですが、肝心の「怪異」が設定できません。しかも占いで倒す怪異っていうのがどうにも難しく、しかも主人公で「ドM設定」を生かすのがめちゃくちゃ難しいということがわかりました。バディの相方をドSにすりゃいいのかなど悩んだのですが、設定がごちゃごちゃしてきたので一度全部放り出しました。もう一から作り直しです。
この辺りで、時間がなくなってきました。
【祠壊し文学罰当たり会場】
https://kakuyomu.jp/works/16818093086708066132
祠壊し文学とかやりながらこの辺は平行していたのですが、全くキャラクターが作れなくなりました。弱った弱った。バッファローも書きたいし。ということで、困ったときのアイディアは既に自分の作品にあるとばかりに過去書いたもので何か使えるものはないかと引っ張り出してきました。
そこで出てきたのが『マナビスト』と『真綿の時間』でした。
【マナビスト】
https://kakuyomu.jp/works/16817330664755424843
【真綿の時間】
https://kakuyomu.jp/works/16817330665345581206
それぞれ『マナビスト』から煽動者としての島村マナブ、そして『真綿の時間』からはまんま千堂壮一を引っ張り出してきてあれこれと魔改造をした結果と「ホラーでバディものやろう!」の勢いが『縛りシバラレ』というわけです。
実は『真綿の時間』は、自分の中でも納得が行っていない作品なのでいつかしっかり書きたいと思っていたものでした。構想としては「亜紀視点」「達也視点」「壮一視点」で崩壊した家族を書こうとしていたのですが、一体どの層向けなのか空中分解していたところにスっと「今度は壮一を救う」というミッションが現れて、もう一度この一家を書こうと思った次第です。「らきらき」パートが異様に真に迫っているのは、そういう事情です。
この辺が固まったのは、なんと十一月に入ってからです。バッファローも書かなきゃ、でも作者の家族が急病で夜中の救急外来に駆け込む事態に(今は元気です)……とかやってるうちに時間はどんどんなくなっていきます。
そこで、「もう書きながら考えるしかない」という暴挙に出ることになりました。ある程度の目標を定めて、そこに向かって書いていく。ちょっとそういうこともやってみようという試みです。つじつまが合えばヨシ! の勢い。
さて、執筆時点で決まっていたことはこのくらいです。
・佐野と茉莉の大まかなキャラクターと行動
・舞台は学習塾(佐野たちと壮一を出会わせる場所がそのくらいしか思いつかなかった)
・佐野の大まかな過去とシキ(死人が生き返る的な)の設定
・Vtuber島村マナブの自殺教唆配信イベント
・壮一が実は話の鍵
・最後は天使の家に乗り込んで、なんやかんやお焚き上げをする(ここが最終目標)
タイトルはテーマの「束縛」と「縛り首」、そしてポップで親しみやすそうな略称から「しばしば」となりました。これは柴犬の写真を見ているときに思いつきました(本当)。いやあ柴犬ってかわいいですね。
また余談ですが、「シバシバ」と言えばアニメ『キョロちゃん』に登場する怪異キャラクターでもあります。アニメのキョロちゃんは見た目が可愛らしいので子供向けと思われるのですが、ホラー回は本郷みつる監督の世界がガチ目に怖いです。おすすめは第4話の『ひとりぼっちの夜』と第59話の『お月様のしずく』です。あとキョロちゃんはたまにガチで泣かせに来ますし、子供にわからないブラックユーモアがかなりちりばめられています。見れる人は是非見てください!
後はノリと勢いで何とかやりました。逆に最後まで書いて振り返って、何が決まっていなかったかを列挙するとこんな感じです。
・壮一のキャラクター(!)
・島村マナブのキャラクター(!)
・吉川、柴崎のキャラクター
・天使の翼会の教義
・壮一と島村マナブの関係
・源東市一家殺傷事件の概要
・お焚き上げ以外のラストの展開
びっくりするほど何も決まっていない中でスタートしました。当初のメモ書きを発掘したところ、現在の佐野君のおおよそのキャラクターが決まったのが11月20日となってたのでなんてこったいという気分でいっぱいです。それでも何とか完結できたので、やればできるという気持ちでいっぱいです。
特に第13話「真綿の時間」は「茉莉が配信で何とかする」という筋書きはありましたが壮一のほうはサッパリでした。そもそも、天使の家に壮一が行く理由が思いつかなかったのです。そこで強制的に「壮一が亜紀を尋ねていく用事を作る」ことになり、そのために突如父ちゃんがぶっ刺されることになりました。第11話の時点でとりあえず刺しておいて、ふわっと顛末を作っておいて、それでどう第13話でまとめるかということになっていました。
そんな未来に丸投げ状態だったので、オチをつけなくてはいけない第13話には苦しみました。正木と対峙する壮一の恐怖感は作者の「どうしよう」という焦燥とリンクしています。作者も正木と対峙していたわけです。そして逆に第14話以降は元から想定していた部分だったので、楽に書けました。ここまで展開で余裕がない中で悩んだのは初めてだったので、書き終わった後しばらく体調不良になりました。自分で書いた話で具合が悪くなるなんて……畜生。
それでは、具合が悪くなるほど頑張ったので主要キャラについて少し解説というか思うところを書いていきます。
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