庭から骨が出てきたら

真紗美

第1話

ガーデニングを頑張ろうと、庭に小さなシャベルを入れていたら骨が出てきた。


骨?なんで骨?


35年ローンで買った一戸建て。中古住宅だけどリフォームを入れてもらい、小さいながらも住みやすく、南の窓から見える小さな庭が気に入った。子供の頃からマンション住まいで庭のある家に憧れていた。都会からちょっと外れているけれど、それなりの住宅地で駅も近い。夫も学生の頃、近くに住んでいたようだ。子供はいないけど優しい夫と二人暮らし。私が好きでやっていたネイルサロンが何かの拍子にバズり、人気が出てきたので思い切って、ローンを組んで買ってしまった。ためらっていた私の背中を『ぜひ買おう』と夫が声をかけて押してくれた。ネイルサロンの収入は多いとは言えないけど、節約しながら憧れの一戸建てを手に入れて幸せいっぱいで、色々と片付けが終わり、小さな庭にやっと手を入れようとしていた午後、骨が出てきた。


そんなに深く掘ってはいないけど、白い大きな骨が出てきて、恐怖と言うより『何だこれは』が先に出て、汗をかきながら掘り続けていると頭蓋骨まで出てきてしまった。これは理科室で見た人間の骨だ。


どうしよう。あなた誰?いやどうする?


夫に連絡して警察を呼ぶ。大騒ぎになるだろう。マスコミとご近所さんも巻き込んでしまう。夫は気持ち悪いから引っ越すと言うだろう。買ったばかりなのに?ローンどうなる?骨が出てきた家なんて誰が買う?いやそれより、ここはやっと見つけた理想の家で、それがめちゃくちゃに荒らされて失ってしまう。


私はまた猛スピードで骨を埋めた。

なかったことにさせてもらおう。

そのうち大きな木でも植えよう。

私は何も見ていない。黙っていればわからない。骨さんごめんなさい!あとからお線香上げさせてもらいます。




「そうきたか」楽しそうな笑い声が書斎に響く。

男はノートパソコンの画面の中で、自分の妻が骨を発見してまた埋める様子を見ていた。そろそろガーデニングを始めると思い、定点カメラを備えてセットしておいた。

何度見ても、平然と埋め直す様子が気持ち良いくらい淡々と冷静だ。

この日妻から電話はなかった。警察からもない。これからもないと思う。

男は昔、人を殺した。家の人が旅行中にあそこに埋めた。つい衝動的に埋めた。あと3体あるはずだ。運良くずっと見つからず、先日この家が売りに出ていることを知り、妻に勧めた。別に隠そうとは思ってなかった。バレたらバレた時でどうにかしよう。なんなら妻にも埋まってもらおうかと思っていたら、さすが自分の妻だった。笑うしかない。昨日桜の木をリクエストされた。チューリップ畑からの変更だった。


「いい奥さんもらったな」男がポツリとつぶやいた。

天気の良い日、お互い骨に気を付けながら、2人で庭に桜の木を植える。

「えっ!どうしたの急に?」

「いや、一生懸命動くから、家と一緒に君を大切にしなきゃなって思った」

「それは私だよ。ありがとう、そしてごめんなさい」

「ごめんなさい?」

「いや、ちがって、あの……毎年お花見しようね」

「そうだね。なんかお線香臭くない?」

「桜の木を植えるから土を清めた」

「何それ?どこ情報?ネット?」

「大切な木だから清めたかったの。たびたびしていい?いや、するから」

「それならお酒とかの方がいいかもよ」

日本酒好きな人がたしかいたはず。

「うん。そうだね。それもいいね、ありがとう」

妻の笑顔は可愛らしくて、夫の笑顔は優しかった。


一生秘密にするから、幸せに暮らそうね。



【完】





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庭から骨が出てきたら 真紗美 @miodama

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