染色体と君と僕と

@ReFXeno

プロローグ

「将来は結婚する!悠貴、約束な。」

「僕も秀矢のお嫁さんになりたい。こんな僕でも良ければ。」

「なんだよそれ。良いに決まってるだろ」

「お嫁さんが言う言葉だって、この前テレビであってたよ」

「へぇ、そうなんだ。そんなこと知ってるなんて頭良いな!」

 照れた笑みを浮かべた少年が笑っている。途端に耳を突くような音が鳴り響いた。いや、これはきっと目覚ましの音。ああ何だ夢か。随分と懐かしい夢を見ていたようだ。窓にかけたカーテンからは日差しが漏れ、いつもと変わらない日常が始まることを暗示しているようだった。今日も変わらなかったな。この世にはTSだとか性転換だとか起きたら性別が変わってたみたいな、フィクションご都合主義のものが存在する。最も、僕はそのご都合主義を望んでいるのだけれど、現実は上手くはいかないみたいだ。自分の平たい胸を撫で、虚無を感じる。本当ならあるはずだったもの。女性を象徴とする胸は骨のゴツゴツとした感覚だけを示し、自分の股間あたりに生えた今はただ排泄を行うだけの道具と化しているソレを見て再びやるせない気持ちになってしまった。いつからだっただろうか、自分の性別に違和感を抱いていたのは。私が生まれたときの生物的な性は男性だった。これは疑いようもない。だけれど、私は女性だ。女性なのだ。けれどこんなこと、親に言えるはずもない。私は本当は女の子なんだよ。可愛い服を着て、可愛い格好をして生きていきたい。なんて言われるだろうか。想像することすらはばかられる。僕は一年近く袖を通してきた服に着替え、一階にある食卓へと向かった。

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