第20話 嵐の前の……
翌日。
「んで? 今日も花井さんは休みなのか」
「そうみたいだね。たぶん、今頃ダンジョン運営委員会からインタビューを受けてるだろうし」
俺は、食堂で火華と会話しつつ、昼食をとっていた。
わりかし痩せている部類に入る火華だが、流石に年頃の男子だ。唐揚げ定食をガッツリ大盛りにして、サラダもプラスで付けている。
対して俺はと言うと、醤油ラーメン(普通盛り)である。
メニューを受け取っている際に、「お前、それじゃ栄養とれないだろ」とか母親みたいなことを言われたが、正直高校生男子なんてこんなものだ(偏見)。
カップ麺を食べ続けて30代で後悔する路線まっしぐらなのである。
……まあ、ここ数日は誰かさんのお陰で食生活が改善傾向にあるが。
ちなみに、紗菜さんと同居してることは伝えていない。
同級生の女子と同居することが周りにどう見られるか……そんなの想像するだけで恐ろしいし、それ以前に彼女はアイドルみたいなものなのだ。
主に男子から、夜道で背中を刺されそうである。
「いや、しかし……凄いな」
「そうだね。紗菜さんって凄いよね?」
「はぁ? 誰が花井さんの話したよ……いやまあ、彼女も凄いけどよ」
呆れたようにため息をつく火華。
え? 彼女のことじゃないの?
「お前のことだよ」
そう言って、火華は周りに視線を向けた。
釣られて俺も周りを見る。
――俺達、というか俺に向けられる視線の数々。
ここ数日、こんなことばかりで落ち着かないのだ。
「いや、まああんなことがあれば注目されるのも納得だよな。知ってるか? お前のファンクラブも密かにできてるらしいぞ」
「えぇ……」
あまりの事態に、俺は絶句する。
ファンクラブって……確かにいい響きだけど、自分が対象にされるのは嫌だな。
なんというか、小っ恥ずかしい。
「随分嫌そうだな。まあ、お前ならそういう反応をすると思ってたけどよ」
「? なぜ」
「決まってんだろ? お前が自己顕示欲の高い人間なら、あれだけ強いことをとっくに知らしめてただろうが」
「たしかに」
それはそうだ。
自分がSSランクであることは、正直面倒ごとしか生まないだろうと思って明かしたことはなかった。
話題が広まった今、メディアが血眼になって取材を求めているだろうに無関心なのも、ダンジョン運営委員会からの取材を断っているのも、ひとえに面倒ごとを避けたいからにすぎない。
「俺としては、あの件は誰もしななくてよかった、で終わりでいいと思うんだけどなぁ」
「そういう、お前の飾らないとこがかえってファンを増やしてるってことに気付いたらどうだ?」
ジト目で睨んでくる火華。
そんなこと言われても、じゃあどうしろって言うんだ。
「まあ、人噂も75日って言うしな。そのうち冷めるだろ」
「だといいけどね」
75日って2ヶ月半だろ? 長くね?
とはいえ、確かに彼の言うことも一理あるのだ。
人の噂はそう長くも続かない。忘れることができるというのは、人間の美徳だ。最強の【
ていうか、消滅してくれなきゃ困る。
「しかしもったいないよな。せっかくそんな強いんだから、もっとその事実を有意義に使えばいいのに」
ふとそう呟く火華。
確かにそれも一理ある。だが、超能力者がみんな超能力を持ったことに感謝するとは限らないし、超能力を使いたがるとも限らない。
なに格好付けてるんだと思われそうだが、少なくとも俺はひけらかすために強くなったわけじゃない。むしろ、強くならなきゃいけなかった環境にいた。ただ、それだけだ。
「まあ、お前がそのままでいいって言うなら、俺は止めないけどよ」
「そうしてくれると助かる」
そう言って、俺はラーメンを啜る。
「そういや、今日は雷我のヤツも休みなんだな」
「ああ、そういえばそうだったね。風邪を引きそうなヤツじゃないけど」
「遠回しにバカって言ったよな、今」
苦笑いしつつ、火華はツッコミを入れる。
あいつが休むなんて珍しい。よほど昨日恥を掻かされたのが応えたのか、それとも――
俺は、なんとなく引っかかりを覚えつつ、昼休みを過ごすのだった。
最弱職と罵られる俺は、難攻不落なSS級ダンジョンの最下層で自由気ままに暮らしたい~アイドル配信者を助けたせいでバズりまくった結果、大変なことになったんだが!?~ 果 一 @noveljapanese
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