第3話
少しでもあの場所から離れたくて、力の入らない足に叱咤しながらたどり着いたのは階段を登ってすぐの教室だった。
近くの席へと鎮座し、机に突っ伏し小さく唇の内側を噛み耐えるかのようにするもそれは私の目からぽとり、また1つぽとりと零れては耐えきれなくなり虚しく決壊した。耐えれば耐えるほど呆気なく溢れてきては私の視界を滲ませるだけで、留まる術を知らないかのようにと頬を濡らしていく。
小さく嗚咽を漏らし、セーターの袖で頬を拭うも止まらない為空中を睨むかのように上を向けば、少しだけ収まった気がした。
彼にも好きになる人はいるに決まってる。それが私じゃないことも。分かっていたにも関わらず、私は卑しくもそれを欲しがった。
彼の視線を独り占めしたい、彼の笑顔を私に向けてほしい、彼のトクベツを欲しがった。次々と流れるそれを拭い、アイボリーのセーターが色褪せてしまったそれをまぶたに宛がえば脳内には彼との思い出が流れ出した。それを振り払うかのようにかぶりをふり、まぶたを閉じる。
お願い、私の想い出を消さないで。
彼への気持ちは蓋をしてしまったのに、閉じきれるわけがないと分かっていたのに。彼と過ごせば過ごすほど溢れてきては、蓋をして消せるほどではないのに。
「っ好き、でした、っ」
「だから、今だけ...、今だけは許して...っ」
私の恋は伝えることもないまま、淡く儚いそれとなり実る前に落ちていった。
だから今だけはあなたを想うこの気持ちと一緒に涙で昇華させてください。
私の独白。 水埜ふぅか。 @Jagger
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