第2話
それからの私は毎日学校が楽しくて、あんなに嫌っていた学校生活が充実してるかのように思えた。恋をすることでこんなにも変わるのね、と頬杖をつきため息混じりにこぼす友達に照れながらも頷き肯定する。そんな私にまたひとつ、わざとらしくため息を吐いた。
そんな毎日を送っていたら彼と少しずつ会話をするようになり、朝はおはようと、休み時間はたまに次の授業について等々と良好な関係を築いていた。前は彼と私は話す仲ではなかったが、これを機に会話しだしたことでクラスからはからかわれることもあった。その度に否定しては、嘘をつけといった言葉の応酬が繰り広げられていた。その会話が面白くて私が笑えば、何故か彼は照れながらも否定していた。こんな日常がもう少し続けばなと思っていたことがいけなかったのか、神様は私に罰を与えてくれやがりました。
粗方決まり、後は先生たちの会議でってとこまで進み彼との時間は終わってしまった。けれど、彼との交流は続いてることに内心嬉しかった。
授業での提出物を集め、準備室へと運び友達がいる委員会へと足を運び過ごしていたが荷物を置きっぱなしにしていることに気付いた私は彼女へ一言告げ、教室をでればテスト期間ということがありコンクールが近いで吹奏楽の音以外は聞こえない物静かさが漂っていた。いつもは聞こえる運動部の声、放課後に集まってお喋りに花を咲かす女の子たち何処かで居残り授業をしているであろう先生の話し声。それらがない為、微かに聞こえる吹奏楽の音がはっきりと伝わってくる。どうやら流行りのを取り入れてるようで、知っている曲だったこともあり思わず口ずさんでしまう。たしか恋愛系で片想いをしている系統だったはず。
―――あなたを想うだけで私は幸せ。こんなにも毎日が幸せだなんて、あなたは知らないでしょ?だからあなたを想う私をどうか許してください。
まるで私の心情を語られてるかのようで、彼への恋心を意識した日は顔から火が出るんじゃないかと思ったぐらい恥ずかしかった。
あの時のことを思い出してしまい、頬を抑えながらその場にしゃがみこんでしまった。辺りを伺いながら感嘆を漏らせば思ったより響いたことに驚き、誰もいないのに何故かすみません、と謝りながら目的の教室へと急ぎ足で向かう。
少し進んだ所でピタリ、と足を止め再度誰もいないか確認し誰もいないことを確認したらドっと疲れたのか、大きなため息が出た。
...早く教室に行って荷物を取りに行こ。
この校舎に通う年数だけすり減った上履きを鳴らし、急ぎ足で向かい教室の扉に手を掛けようとすると中から話し声が聞こえた。チラリ、と中を伺えば彼と...女の子?の声がくぐもって聞こえた。いけないと分かるが少しだけの好奇心で扉に耳を当てる。いけないと分かっていながらわざわざ聞き耳を立てた私に、あの時やめておけば良かったと後悔に駆られるも、もう後の祭り。脳の片隅で出す警報に気づかないフリをした私への罰だ。
「...ごめんね、テスト期間に呼び出して」
「ううん、大丈夫」
「俺、君のことが好きなんだ。付き合ってください」
それを聞いた私はヒュっと息が止まった錯覚に陥った。思わず喉元へ手を添えるも、ドクドクと一定のリズムを刻むそれに、呼吸の仕方を忘れた魚のようで一定の呼吸が乱れる。
分かっていた、分かっていたけど彼の口から直接聞くとこんなにも違うんだ。頭の中では私なんか、と思っていても脳がそれを受け付けてくれずこの場を離れようと足に力を入れるが思うように力は入らず、ズルズルとその場に座り込んでしまった。口元に手を当て、ゆっくりと息を吐いて逸る鼓動を押さえるかのようにするも上手く出来なかった。それでも脳内は彼の先程の言葉を反芻していた。彼はあの子のことが好き、あの子はなんて返すの?あの子と彼は付き合う?やだ、聞きたくない。
もう体に力を入れ、壁伝いになんとか立ち上がりフラフラとこの場を離れる。私の頭の中には去り際に見えた彼の照れた表情が離れなかった。
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