第6話 未来への波紋

 「エネルギーバンクは、誰にでも存在している。赤字も黒字も自分次第。だからこそ、大切に管理しなければならない。」


 春人は、夢の中で行員から告げられたその言葉を、まるでお守りのように心に刻んでいた。それ以来、彼の生活は確実に変わり始めた。そして、それは彼自身だけでなく、周囲の人々にも影響を与えるようになっていった。




 「最近、なんだか雰囲気が変わったね。」


 大学の友人たちからそう言われることが増えた。以前は疲れているのを隠すために笑顔を装っていた春人だったが、今は心から楽しんでいる表情が自然と浮かぶようになった。


 バイト先でも、「余裕があると接客にも違いが出るね」と褒められるようになった。春人は、自分の変化が行動や言葉を通して他人に伝わっていることに気づき始めた。


 ある日、友人がぽつりと漏らした。


 「俺、最近疲れてばっかりなんだよね。どうやってそんなに元気そうにしてられるんだ?」


 春人は微笑みながら、行員の言葉を少しずつ話し始めた。


 「実はさ、『エネルギーバンク』って考え方を知ってから、ちょっと意識を変えたんだ。疲れすぎる前にちゃんと休むとか、自分が楽しいと思うことに時間を使うとか……。」


 友人は興味津々に耳を傾け、その話に感銘を受けた様子だった。




 春人の話に影響を受けた友人たちは、次第に自分たちの生活にもエネルギーバンクの考えを取り入れるようになった。


 「早く寝るだけで、こんなに朝が楽だなんて知らなかった。」

 「趣味をやる時間をちゃんと作ったら、仕事の効率も上がったよ!」


 少しずつ、春人の周囲にも小さな変化が生まれていった。


 そして、その変化はさらに広がり、大学のサークルで「エネルギーバンクを黒字にするコツを共有するイベント」が企画されるほどになった。


 春人はその場で、自分の経験を語ることになった。


 「僕たちのエネルギーは無限じゃないから、どう使うかが本当に大事なんです。自分にとって意味のあることを選んでみてください。きっと、心も体も軽くなりますよ。」




 春人自身もまた、新たな目標に向かって進んでいた。音楽活動を続けながら、いつか「エネルギーバンク」という考え方をもっと多くの人に伝える仕事をしたいと考えるようになったのだ。


 「エネルギーが満たされていれば、未来の選択肢はもっと広がる。だから、自分を大切にするんだ。」


 春人の言葉と行動は、やがて大きな波紋を広げ、周りの人々の心にも届いていく。


 その波紋は、誰かのエネルギーバンクを黒字に変える小さなきっかけとなり、世界を少しずつ豊かにしていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エネルギーバンクの赤字宣告 まさか からだ @panndamann74

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ