タラも一人は旨からず
不定期にふらりといなくなる鳥尾巻父は、時々お土産を持って帰ってきます。現地の人に貰ったとか、なんか旨そうだったから皆で食べたくて買って来たとか。一斗缶入りの殻付き牡蠣やスーツケースいっぱいの海ブドウを持ってきたこともあります。 どないせえと……。
父がどんな人物かはこちらのエッセイで触れています。
「モブ鳥落とすイキオイ」
https://kakuyomu.jp/works/16817330668411924495
私が高校生だった頃、学校から帰ると一週間ほど音信不通だった父が何やら大きな発泡スチロールの箱を持ってきました。
「新潟に行ってきたんだ♪ 大きくて美味しい鱈を貰ったんだよ。鍋が食べたいな」
無邪気に言えばいいってもんじゃねえのよ、お父様。どうせ現地で知り合った人を誑しこんでもらって来たんでしょう。私は恐る恐る箱を開けて驚愕しました。切り身ではなく丸ごとの真鱈!!
じっと見下ろすと、息絶えた鱈ちゃんの眼が恨めし気に見上げてきます。アタイ花も恥じらうJKなのよ。今日アンタと出会うなんて思ってもみなかったわ。今夜は雑誌で見かけたシャレオツパスタでも作ろうと思っていたのに。しかしこのままだと腐る。
私は覚悟を決め調理に取り掛かりました。ぬるぬるなので軍手をはめて挑みました。ぬめりや鱗を取り頭を落とします。腹を捌き内臓や骨を外して卵や肝は別で取っておきます。粗汁などに使えるので頭や骨も別保存。塩と酒で臭みを取って下処理は終了しました。あとは野菜やキノコを切って昆布出汁を取った土鍋に放り込むだけ。美味○んぼ読んでて良かったわぁ。
父は友達を呼び上機嫌で新潟のお酒を飲みながら鱈鍋を堪能していました。お父様、飲み過ぎはいけませんよ、どうせそのお酒も貰って来たんでしょう。
「美味しいねえ。鳥ちゃん、さすが私の娘」
人を褒めているようで自画自賛することにも余念がありません。皆でわいわい言いながら食べた鍋はとても美味しかったです。願わくば雰囲気の良い旅館などで上げ膳据え膳でいただきたかったところですけれども。しかもその後数日手から魚の臭いが抜けなくて、花も恥じらうJKだった私は少しだけ父を恨んだのでした。
ちなみに父は初めて立ち寄った家で蕎麦を打ってもらったり、御茶請けに秘蔵の糠漬けをご馳走になったりする特殊能力の持ち主です。ほんまどないなってんねん、お父様。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます