とっとと元の世界に帰らせろ!

@Mahiro-M

第1話

俺の名前は鬮目 空(くじめ そら)。テストの度に殺意を覚える、クッソ書きずらくて珍しい名字なことを除けば、特に言うことも無い何処にでもいる普通の男子中学生だった。

そんな俺は何の因果か幼なじみ2人、慈 透(うつみ とおる)と鶏冠井 環(かいで たまき)と共に中学2年の夏、異世界に勇者一行として召喚された。そして3人で旅に出て魔王ぶっ倒して世界を救った。以上。

異世界での出来事の一部始終があまりに簡潔過ぎると自分でも思うが、正直これ以上のことを思い出すと猛烈に胃が痛くなるから記憶の彼方に捨てておきたい。お前が魔王では?人の心をどこに捨てたんだ?と問いたくなるような優しさの欠けらも無い、本来治癒目的の能力で魔王軍のモンスター相手に攻撃及び拷問をしまくる紅一点でヒーラーの透。お前は一昔前のヒロインかとツッコミたくなるようなドジをしでかす、敵に打ったはずの魔法が何故か味方の俺たちに向かってくるという最早敵なのか味方なのか分からない魔法使いの環。この2人を引き連れての旅は本当に大変だった。何度、俺はいつから勇者から保育士にジョブチェンジしたんだと考えたことか。思い出したのは記憶の上辺も上辺だと言うのに、もう胃が痛くなってきた。誰か俺に日本の胃薬をくれ。異世界の吐き気を催すような不味い魔法役はうんざりだ。

そんな苦労の末、5年という歳月の犠牲を払って俺たちは異世界に平和をもたらし、元の世界に帰れることになったんだが。


「これの何処が元の世界なんだ、誰か説明しろ!!」


目の前で高層マンション並みの大きさのモンスターと漫画のキャラ顔負けの驚異の身体能力と攻撃力、防御力を駆使して戦う赤青黄ピンクとカラフルな戦隊ヒーローたち。

俺たちが元いた世界では戦隊ヒーローなんて架空のものだったはずなのに、いつから現実に変わったんだ。百歩譲って俺たちが異世界で魔王討伐の旅に出ている間に未知のウイルスによって人類が滅亡しただとか、科学技術の発展でロボットが街を闊歩してるとかならまだ分かるが、戦隊ヒーローが現実になるのはどう考えてもおかしいし、高層ビルと並ぶ大きさのモンスターが日本を襲撃しているのも意味が分からない。

目の前に広がる光景に、俺は堪らず腹の底から声を出した。


「とっとと元の世界に帰らせろ!!」

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