人生の選び方

@mia

第1話

 母のお腹にいる時から薔薇色の人生を約束されていた。

 家はこの王国の中でも上位に入る裕福な公爵家だ。

 父はとても優秀な魔法使いで陛下にも一目置かれていた。その能力を発揮し公爵領はとても豊かな土地だった。

 母は陛下のいとこに当たる。社交で夫人たちを通して夫の支えとなっていた。

 そんな忙しい両親だが子ども達を教育係に丸投げするようなことはしなかった。わずかな時間でも子どもと接するような愛情深い親だった。

 兄 一人、姉二人の四番目に生まれる予定だ。

 のびのびと元気に優秀に育っている三人の子ども達を見れば、四番目の子どももどのように育つか想像できる。


  ☆  ☆  ☆


「僕はここがいいです」

 多くの家のリストを見ながら僕はこの公爵家の息子として生まれることを選んだ。     

 生まれる先をなぜ選べたかというと、僕は手違いで死んでしまったからだ。

 本来だったら僕はちょっとしたケガで命に関わるようなことはなかったが、神様のミスで僕は死んでしまった。そのお詫びということで神様が次に生まれる先を選ばせてくれた。

 出生先一覧表には今までいた世界とは別の異世界での生まれ先もあった。そして内容を読んで説明を聞いて、一番条件がいいのはこの公爵家の次男だった。

 僕がリストから選んだ公爵家を確認している神様が渋い顔をしている。

「この家はやめた方がいい。この家は厳しい。今まで君のいた世界とは全然違う考え方をする」

「それは魔法のある世界ですから。今までの僕とは違う生活になるのは分かってます。ここが一番条件がいいんです。ここにお願いします」

「いや、しかし」

「生まれ先を選ばせてくれるって言ったじゃないですか」

「確かに言ったが……。しかし、ここはいろいろと条件が厳しいから、君が考えてる通りになるとは限らん」

「考えている通りって魔法が使えないとか、そういうことですか。でも魔法が使えなくても公爵家の人間なら生活に苦労するとは思えません。ぜひここでお願いします」「そこまで言うのなら分かった。希望通りにしよう」



 僕は公爵家の次男として生まれ、薔薇色の人生を歩むはずだった。

 それなのに今の僕は公爵家の遠縁、遠縁すぎて赤の他人の子爵家の次男として生きている。

 子爵と言っても平民より貧乏だ。ギリギリの生活のちょっと上 くらいの生活レベル。どうしてこんなことになったのだろう。

 三歳の時に公爵家の子どもが受ける儀式を受けた。その儀式で僕は公爵家にふさわしくないと判定されてしまった。

 過去に一例しかないという判定に家は大混乱になった。一族の協議の結果、僕は公爵家から出された。

 薔薇色の人生を歩むにはそれにふさわしい人間ではないといけないらしい。

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