薔薇の花

XX

誰かが花を置いてくる。

 薔薇色でイメージされるのは赤だろうけど。

 赤い薔薇の花言葉は「情熱・愛情・美」なんだよね。


 他の色の薔薇も意味合いとしては他者への賞賛、もしくは愛に関わるものが多い。


 だからまあ、毎日赤い薔薇の花が、俺の学校の自分の机の上に置かれるようになったとき。


 誰が置いたのかについて気になった。


 ……女の子だと嬉しいけど。

 もし男だったら嫌だな。


 俺、ストレートだから。


 別にそういう性の対象がストレートで無いことが許されないことで、そういう人間は社会から排除されるべきだとは思ってはいないけど。

 俺には俺の性志向……価値観がある。


 それを無視して、自分の価値観をゴリ押ししてくるのはどう考えても変だろ。

 純粋な想いだからとか、真剣なんだってのは理由にならない。

 受け取った相手がどう思うか?


 一番大事なのはそこだろ。

 真剣だったら何をやってもいいって、そんなわけない。


 俺、間違ってないよね?


 そのせいで、もし薔薇を置いているのが男だったら、一言言ってやろうと思ってた。


 ……まぁ、自分が絶対に正しいかどうか、親以外誰にも確かめちゃいないんだけどな。

 そのせいで万一、誰かと衝突すると嫌だから。


 一応俺の親は、俺が正しいと言ってくれた。




 薔薇が置かれるのはどうも朝早く。

 だって、誰も薔薇の花が俺の机に置かれるところを見て無いんだ。


 それが見られているなら、きっと誰かが俺に言ってくれてるはず。


鳥古路とりこじ君、○○がキミの机に薔薇の花を置いていたよ」


 って。

 それが無いんだから、そういうことなんだ。


 自分で言うのも何だけど、俺はクラスの人気者だからな。


 だから 


 なんとかそれを見てやろう。


 俺は一念発起し、超朝早くに登校したんだ。

 校門が開くと同時に学校に凸する勢いで。


 すると……


(えっ)


 ……ものすごく綺麗な女子が、俺の机に薔薇の花を置いていたんだ。


 清楚そうな黒のロングヘアの美少女で。

 ウチの制服の黒のセーラー服が良く似合っていた。


 あんな綺麗な子が、俺に、薔薇を……?


 内心「誰かに花を贈るなんて男っぽい。やってるのはきっと男だ」って決めつけがあったからさ。

 めっさ嬉しかった。


 だから


「あ、あの!」


 俺は教室に飛び込んで。

 彼女に声を掛けた。


 すると彼女は振り返って


「おはようございます鳥古路とりこじさん」


 ……挨拶を返してくれた。



★★★



 ウチのクラスに、鳥古路とりこじ早麗太されいたという男子生徒が居たんだけど。


 ある日突然、行方不明になった。


 ある日、急に家を早く出て、登校したはずなのに。

 それきり、行方不明になったんだ。


 結構楽しい奴で、明るくて。人気者で。

 悩みなんて無さそうだったのに。


 何があったんだろうか?


 皆、気づいてあげられなかったことを悔やんでいた。


 ……思えば、彼が行方不明になる前。


 1カ月くらい、変だったな。


 毎朝学校に来るたびに、顔をしかめて。


 、ゴミ箱に捨てるというパントマイムみたいなことをしてたから。


 ……何かのツッコミ待ちなのかな?


 そう思っていたんだけど。

 いいツッコミを思いつかなくて。


 聞いてあげられなかった。


 ひょっとしたら、鳥古路とりこじ君の精神がおかしくなってる前兆だったのかもしれないのに……!

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薔薇の花 XX @yamakawauminosuke

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