第2話 え。ちがった。
池袋のルミネでアメリカンマフィアに出会って、気絶した後、僕はどうにかして家に帰ったようだった。翌日、ベットの上で目を覚まし、嘘のような本当のアメリカンマフィアとの出来事に震えた。
数日後、高校の同級生との飲みで池袋に訪れた。目的の飲み屋に行く前に、念のためルミネの最上階へ立ち寄った。エスカレーターで徐々に最上階の様子が見えてきた。今日のルミネは、誰もが思い浮かべるスタバにおしゃれな店員さん。普通過ぎる光景に腰を抜かし、床にお尻をつけて座り込んでしまった。そんな僕の様子に気付いたスタバの白スキニーを履いたお兄さんが、手を伸ばしてくれた。「大丈夫ですか?」さわやかな声にキラキラの笑顔。普通だったら、“とくんっ”とときめく場面だろう。しかし、僕は彼の白スキニーにしか目がいかない。体系は違えど、この間目を奪ったアメリカンマフィアとおそろいだ。彼は、あのマフィアと同一人物ではないかと、疑いの目を向ける。僕は現実でこんなことをするのはいけないと思いつつも、お兄さんに「あなたの優しさに感動して、お礼をしたので連絡先を交換していただけないでしょうか。」と迫った。凶器に満ちた僕に対して、お兄さんはさらにさわやかでキラキラしすぎた笑顔を向けて了承してくれた。
飲み屋に向かう途中、連絡先の交換はしたものの、アメリカンマフィアの話題をどうやって切り出すものかと頭を悩ませた。気づけば目的の飲み屋に着いていた。浮かない顔の僕を見つけた友達が「体調悪いの?」と心配してきたので、アメリカンマフィアに悩まされていると答えると「アメリカンマフィン?」と聞き返してきた。そんなこと言う人いるのかよ!と興ざめして、自然とアメリカンマフィアの存在を忘れた。
飲み屋の席に案内されているときに、無駄にハリとツヤのある肌色を多数目にしてしまい、僕は激しく動揺した。先頭を歩く店員さんは、どんどん肌色の近くへと歩いていく。僕の脳裏には、ルミネから拠点を移したかもしれないアメリカンマフィアたちが浮かび上がっていた。通された座席は、なんと肌色たちの隣である。泣きそうだ。連れの友達にばれないようにそっと隣を覗いた。
隣の席にいたのは、ただのボディービルダー達だった。僕がのぞき見しているのに気付いた友達が、隣の席を覗く。その友達に気付いた友達もまた、覗く。気づいたときには、僕の友達全員がボディービルダー達に釘付けになっていた。あまりの視線の多さに、ボディービルダー達もこちらに気付き、にこりと優しく笑った。すると、僕以外の友達が全員「ずっきゅーん」と恋に落ち、磁石のようにするすると彼らの隣を陣取り連絡先交換が始まってしまった。恋人づくりに飢えている人たちは、アマゾンのハイエナより怖いわぁと思った。とはいえ、全員の様子を見たときにひとり余ってしまったボディービルダーがいたので、さりげなく連絡先を交換しておいた。出会いを求めていなくても、未知の人種ボディービルダーにワクワクしてしまうのは仕方がないと思う。
僕が友達とボディービルダーとわちゃわちゃしていた時に、誰にも気づかれなかったが、僕のスマホの通知音がひとりでに鳴った。
なんで。ここに。アメリカンマフィア 流羽百眉 @ru_ha
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