車の静電気対策法

矢木羽研(やきうけん)

放電の極意

 冬は乾燥の季節であり、静電気の季節である。特に、自動車に乗る機会の多い方は、あの放電によって痛い目に遭っている方も少なくないのではなかろうか。


 なぜ、車に乗ると静電気が起こりやすいのか。まず静電気というのは、常に人間の体内から発生する。普段は足元から床や舗装を通じて少しずつ地面に放電されているのだが(たとえゴム底の靴であっても少しずつ放電される)、そのアースが遮断されている状態だと体に溜まり続けるのだ。


 車に乗って座席に座っている間、その車の構造にもよるのだろうが、基本的に体内の電気は放電されることなく溜まり続ける。もちろん上限のようなものはある(乾燥の度合いが、この上限に関係している気がする)のだが、短時間でも電気は溜まっていく。


 乾燥の激しい日であれば、ほんの数秒間座席に座っただけで、既に放電するほどの静電気が溜まっている(車の走行によって溜まると思われがちだが、停まったままでエンジンすらかけていなくても溜まる)。この状態で地面に足をつけ、何らかの金属(例えば車の表面やドアノブ)に触れると、放電が発生する。金属に限らず、コンクリートの塀などでも放電が起こるので注意!


 溜まった電気は放出するしかない。例えば鍵などの金属棒の先端を持って、もう片方の先端を金属に付ければ、安全に(痛みを感じずに)放電することができる。この時、一度の接触では放電しきれないことがあるので、特に乾燥している日は何回かに分けてタッチすること。


 静電気放出のための専用グッズが売っているが、一般的な鍵やキーホルダーなど、通電性のよい金属製品であれば何でも構わない。ただし先端で車のボディーなどを傷つけることが不安ならばテープを巻くなどしておくとよいだろう(もちろん鍵でやったら駄目だが)。


 せっかくの放電グッズを持っていても使い方を理解していないと意味がない。重要なのは、ことである。繰り返すがである。そして足(靴)を地面に付けた状態、つまり完全に降りた状態で金属にタッチするというのが重要だ。降りる前にドアノブに触れても放電されない。このときに静電気が溜まっていないと勘違いしないようにしよう。


 なお、静電気が溜まりやすいタイミングは乗車時に限らない。例えば、本屋などで踏み台に乗っている状態。その踏み台がプラスチック製だったりすると、乗っている間は体に静電気が溜まり続ける。踏み台に乗って高いところを物色しているとき、金属製の棚に触れて放電が起こったという経験はないだろうか。


 お子様の場合、プラスチック製の遊具も要注意である。しばらく遊んだ後に地面に降りてきて、金属製のネジなどに触ったりするとかなり強烈な放電が発生することもある。いい機会なので、電気が溜まる仕組みと、その電気を安全に放出する仕組みについて教育してみてはいかがだろうか。

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