第38話 部屋

 帰り道。俺は真里亜を家に送る。


「うーん、まだ足りないなあ」


「何が?」


「だからキス」


「う……お前、剛史とは一回もしなかったんだろ?」


「そうなんだけど、不思議だよねえ。健人とは何回もしたいって思っちゃう。私って健人みたいな男子に性欲感じるタイプだったんだなあ」


「性欲って……はっきり言ったな。でも、自分で分からなかったのかよ」


「全然気がつかなかった。今まであんまり健人を異性として見てなかったからかも。でも、いざそうなるとちょっと興奮が……」


「ま、真里亜……俺は真里亜の真面目なところが好きなんだからな」


「あ、そうなんだ。でも、だったらギャップ感じない? あの真面目な真里亜ちゃんが自分に欲情してるって」


「う……確かにそれは」


「ということで、部屋に寄ってってよ」


「……いいのか?」


「うん。あ、でも今日はキスだけだからね」


「わ、わかってる」


 俺は真里亜の家にお邪魔することにした。


「ただいま」


 真里亜がそういうと真里亜のお母さんらしき人が出てきた。


「おかえり、真里亜。あら、その人は?」


「彼氏の健人」


「え? 彼氏って、別の人じゃなかった?」


「お、お母さん!」


「あ、ごめんごめん」


「もう……お母さん、天然だから」


 やっぱり親子だな。


「でも大丈夫だよ。前の彼氏の親友だから」


「え? それいいの?」


「あ、えへへ。ちゃんと話は付いてるから大丈夫。じゃあ、健人、部屋行こう」


「う、うん」


 俺は真里亜の部屋に入った。


「ここに健人が来るのは二回目だね」


「そうだな」


「前回は緊張してたからねえ、健人」


「う……だって、好きな人の部屋だし」


「うんうん、そうだったんだねえ」


 そう言って俺の顔をのぞき込んでくる。


「健人、こっちこない?」


 そう言ってベッドに座った。


「いいのかよ」


「彼氏がだめなわけないでしょ?」


「……じゃあ、剛史も座ったことあるのか?」


 思わず聞いてしまった。


「あるけど、なにもしてないよ。知ってるでしょ」


「そうだけど……」


「あ、妬いてるんだ」


「少しな」


「じゃあ、剛史がやったことは全部やっていいから。それ以上ももちろん!」


「そ、そうか」


 俺はベッドの真里亜の横に座った。


「健人……」


 そう言って俺を見てくる。俺は我慢できずにキスをした。すると、真里亜が抱きついてきて俺を倒してくる。俺は真里亜の上に乗っかる形でキスをした。そうなると、真里亜の胸の上に俺の体が乗ってしまい、否応なく真里亜の胸を感じてしまう。


「真里亜、ごめんな……」


「何が?」


「胸」


「別にいいよ。でも、健人の体を胸で感じるのもなんか興奮する」


「真里亜、お前なあ」


「ん? 何か堅い物が当たってるけど」


「あ……」


「ニシシ、健人、すごーく興奮してるみたいね」


「し、仕方ないだろ。真里亜とこういう状況なんだし」


「うんうん、いいよ。まあ、私も人には言えないけど」


「え?」


「私も興奮してるって事。いいから続きしよ」


 そこからはキスの続きをした。それ以上のことはしていない。でも、途中で真里亜の顔をなでたり、頭をなでたりした。そのたびに真里亜は恍惚の表情を浮かべていた。


 しばらくすると、外から声がかかった。


「真里亜? 開けていい?」


 お母さんだ。


「ちょ、ちょっと待って!」


 真里亜が言う。慌てて俺たちはベッドに腰掛けた。


「い、いいよ」


「健人君はご飯食べてく?」


「い、いいえ、ちょっと寄っただけでので。家にも夕飯の用意があると思いますし」


「そう。わかったわ。それと真里亜」


「え?」


「髪ぼさぼさ」


「あ!」


 慌てて真里亜が髪を直す。しかし、これまでどんなことをしていたかは丸わかりだ。


「何やってもいいけど、まだ高校生なんだから避妊はしっかりね」


「お、お母さん!」


「準備してるの?」


「え、準備って?」


 真里亜が俺の顔を見る。


「はぁ……健人君は準備の意味分かるよね」


「は、はい」


「ちゃんとしなさいよ」


「わかりました」


「よろしい」


 お母さんは部屋を出て行った。


「健人、準備って?」


「大丈夫。まだそこまで俺たちは行ってないから」


「そ、そっか」


「俺の方で何とかするから」


「う、うん。私、よくわからないからよろしくね。じゃあ、なんかゲームでもする?」


「そ、そうだな」


 そこからゲームを始めたが、俺の高ぶりはなかなか収まらなかった。


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