牛乳をやめると骨が強くなる??

加賀倉 創作

何事も適量を……

 はじめにはっきりと言います。


 牛乳は……


 骨粗鬆症を加速させます。


 何を言い出すんだ、と思われるかもしれません。


 ですが、もしありがたくも本編に最後までお目通しいただけたならば、一定の賛同をしていただけると、考えます。




 ***




 まず、牛乳には、カルシウムばかりが多く、拮抗し合う兄弟的存在の元素、マグネシウムが、少なすぎます。


 カルシウムが硬の元素なら、

 マグネシウムは柔の元素です。


 つまり……


 カルシウムは骨の硬度を上げ、

 マグネシウムは骨の弾力性を上げます。


 例え話をすると、ダイヤモンドが、モース硬度(国際的かつ化学的な硬さの指標の一つです)が最高レベルの〈10〉であるにもかかわらず割れやすいのと同じように、ただ硬いだけでは、骨が強いとは言えません。硬も柔もなければ、真の強さではないのです。


 牛乳の成分の配分では、骨はダイヤモンド的に硬質偏重になります。


 骨粗鬆症への、第一歩です。


 (どんどんいきますよ?)




 ***




 次に、牛乳の中のカルシウムは、体の中でどのように移動していくのか、見ていきます。


 パック一本の牛乳、200ml程度が多いですかね。給食を食べる生徒さんならこれを飲んでカルシウム摂取。ご家庭でも、朝ご飯とコップ一杯(100〜200ml)の牛乳を飲む方は、今も日本に多いように思います。


 口、食道、胃、小腸を経て、大腸にたどり着くと、大腸は水分を吸収し、カルシウムの乗った水分(ミネラル分は水溶性です)はやがて血液中に流れ込みます。


 しかし、牛乳摂取による血中カルシウム濃度上昇はあまりに急激かつ大幅なので、今度は体はせっせとカルシウム排出を開始します。


 排出の方法は、尿です。カルシウムの乗った血液が、腎臓で各種のサイズの大きな成分を濾されて、尿になります。


 カルシウムが尿に乗って排出されると、今度は血液中のカルシウムが足りなくなるので、どこから調達するかというと……


 骨です。


 骨を溶かして、血液中にカルシウムを戻すのです。


 加えて、そもそも牛乳はpH6程度の酸性食品であり、体液を酸性寄りに傾けます。


 体内環境の酸性化は、病原菌やがん細胞にとってウェルカムな、よくない変化ですので……


 アルカリ性寄りに戻す必要性が出てきます。


 体液は弱酸性の体表とは違ってpH7.4程度の弱アルカリ性で保たれます(恒常性ホメオスタシスの一環)ので、酸性をアルカリ性に変えるために、カルシウムが使われます(骨から調達します)。


 (補足:pHは、0〜6で酸性、7で中性、8〜14でアルカリ性です)


 さらにさらに、牛乳に多く含まれるリンには、カルシウムの吸収を抑制、体外に排出する機能があります(私の尊敬する歯科医師、小峰一雄こみねかずおさんがそうおっしゃっています)ので、牛乳はカルシウム摂取源として適切とは思えません。


 以上から、牛乳を飲んでも、実質カルシウム摂取になりません。




 ***




 ──牛乳が骨に良いとは言い難い。


 それを示す根拠もあります。


萩野 浩, 大腿骨近位部骨折発生率に関する世界とわが国の動向─骨粗鬆症診療のグローバル・スタンダード─. ホルモンと臨床, 2007, 55, p22 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2007/073011/200718044A/200718044A0005.pdf


  上記論文の中で萩野は、「世界各国の四肢骨折発生率に関しまして、日本人を含めたアジア人での発生率は、北欧や米国の白人のものより明らかに低値である」としており、国別発生率概算値は、35歳以上の10万人あたりで、


 米国(Rochester 1978-82)

 550

 

 フィンランド(Center Finland 2002-03)

 420


 スウェーデン(Malmo 1987-91)

 680


 フランス(Picardy 1987)

 230


 スペイン(Cantabria 2002)

 280


 中国(Baijin 1990-92)

 110

 

 韓国(Chonam 2001)

 200


 日本(鳥取 1998-01)

 230


 のようになっており、酪農が盛んな地域、乳製品摂取量が多い地域で四肢骨折率が高くなっていることから、「牛乳=カルシウム=骨強化」とは言い難いのではないでしょうか。


 他にも、Cummings, Kelwey, Nevitt, O'DowdらによるEpidemiologic Reviews(1985)では、世界9カ国の10万人あたり年齢調整臀部骨折率と乳製品の摂取量の関係を調査したところ、


 骨折率の高い順に、

 ニュージーランド、アメリカ、スウェーデン、イスラエル、フィンランド、イギリス、ホンコン、シンガポール、南アフリカ分区


 乳製品の摂取量の多い順に、

 フィンランド、ニュージーランド、スウェーデン、イギリス、アメリカ、イスラエル、シンガポール、ホンコン、南アフリカ分区


 となり、かつ、両項目で下位3位に位置するホンコン、シンガポール、南アフリカ分区3地域において、1人が1日に摂取する乳製品の量はいずれも150g以下であるのに対し、ほか上位6カ国においては、300g以上。その上ニュージーランドに至っては10万人あたり骨折率が1位の110人で乳製品摂取量も2位の720gという結果になっている。


 【詳細】

 ニュージーランド 110人-720g

 アメリカ 90人-460g

 スウェーデン 75人-510g

 イスラエル 60人-320g

 フィンランド 45人-730g

 イギリス 40人-480g

 ホンコン 30人-100g

 シンガポール 20人-120g

 南アフリカ分区 5人-40g


 乳製品摂取量と骨折率は、冒頭では生化学的に見ると正比例すると述べましたが、データで見ても正比例の関係にあると認めざるを得ないようです。




 ***


 


 次に、日本と乳製品の関係を見てみましょう。


 日本ではごく一部の貴族的階級を除いて、牛乳を常飲する庶民など、牛すきなど流行り始める明治時代まではいませんでした(飛鳥時代から平安時代を中心に、『蘇』というチーズ的な何かが献上品としてあったそうです)。


 よって日本人の体には、根本的に、牛乳は合いません。


 一世紀そこそこで食事の変化に適応できるほど、大型哺乳類にんげんの進化は早くありません。


 牛乳飲むとお腹の調子が……なんて方も、多いのではないでしょうか。


 多くの日本人の場合、牛乳の中にある乳糖という糖質からは、エネルギーを上手く利用できずに、下痢になったり体調不良をおこしかねません。


 (加工品になると、乳糖の量も変わるので、まだマシだという声も聞いたりします)


 もちろんヨーロッパなど、乳製品が古来から親しまれていた地域の人々の多くには、比較的高い乳糖耐性が備わっているので、牛乳から、乳糖から、エネルギーを上手く取り出せます(逆に日本へ寿司を食べに来た欧米人、海藻類の消化は苦手だったりしますね)。


 一応日本人にも、乳糖分解酵素をたくさん持っている時期が存在してはいます。それは、母親の母乳を飲む乳児期です。人間の母乳にも、乳糖が含まれていますが、乳児期の人間の腸内には乳糖分解酵素が多いので、母乳のせいでお腹を壊すということは一般には起こりません。しかし乳離れした後は、日本人の体は乳糖分解酵素の役割は終わったと判断し、デンプン分解酵素が優位になっていくので、大人になってから乳製品をとると、お腹を壊してしまう人が続出するわけです。


 そして何を隠そう、我々は……


 乳飲み子ではありません。


 大人(一般的生物ヒトとしての生物学的成長度合いの話であって精神的成長を指しません)かどうかは読者様によりますが、少なくとも、母乳なんて飲みません。


 (飲む人がいるのなら、すみません、一旦目を瞑ります……余計でしたね)


 牛乳は、牛の母乳ですので、当然牛の「赤ちゃん」を育てるための設計になっています。


 にもかかわらず、美味いものは仕方がないですが、我々は多かれ少なかれ牛乳を摂取します。


 戦後、アメリカが日本に脱脂粉乳スキムミルクを大量輸出しましたが、それは自国で牛乳からバター等に加工する高価な脂肪の部分を抽出したときの残りカスです。輸送時間もあって低品質の脱脂粉乳が、アメリカにとって儲けのタネになりました。


 戦後、学校給食で牛乳が毎日のように飲まれるようになりましたが、あれは乳業利権によるものです。


 戦後の食糧難の中、見かけの栄養補給手段としては良かったのでしょうが、日本人の体に合わないのは確かです。


 戦後世代の、脱脂粉乳や牛乳のおかげで生きながらえた、大きくなった方々の根本を否定することになっていれば大変申し訳ないのですが、事実は、そうです(これをお年寄りに伝えて、激しい反論にあったこともあります)。


 乳業は守られています。


 コロナ禍では、感染予防策としての休校措置から、学校給食の停止が頻発しましたが、売れ残った牛乳を国民総出で大量消費しようという一大ムーブメントがありました。


 搾乳しないと乳牛の健康や命、その後の牛乳の品質に関わると言いますが、そもそも種付けを減らして、余計に搾乳を増やさないような措置はなされたのでしょうか? まさか、牛乳消費ムーブメントに旨みを感じて、売り上げ維持したいがために搾乳を減らす努力をしなかった、なんてことはありませんよね?


 でも搾乳を減らすと酪農に従事する人の経済状況が……などと指摘があるかもですが、ならばなぜ他でもない牛乳にフォーカスしたのでしょうか。牛乳だけ優遇でしょうか? 給食がなくなるのなら、米はどうなるのでしょう? パンはどうなるのでしょう? 肉や野菜はどうなるのでしょう? 保存が効かないものも、もちろんありますよね。野菜なんかは一度植えてしまえば成長して、育ち過ぎると商品になりません。そもそも他にもあの時期にはありえないほどの業態が影響を受けました。乳業は、何らかの庇護下にあったのではありませんか? 可能性は、ありますよね?




 ちなみにこれは突然の独り言ですが、M社という会社は、三大乳業メーカーのうちの一つを抱えています。そしてM社の子会社(医薬部門、新コロのワクを作ってます)のとある社長の祖父は、現千円札の肖像にもなっている細菌学者、北里柴三郎です。


 牛乳は確かに料理を豊かにします。


 が、カルシウムが摂れると思って飲むのは違う、骨を強くすると思って飲むのは違う、という気が、してきませんでしょうか。

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牛乳をやめると骨が強くなる?? 加賀倉 創作 @sousakukagakura

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