エピローグ「紅い瞳に映る未来」

それから一年の月日が流れた。

雪菜の赤い瞳は、もう過去に囚われていない。

以前の怯えた表情は消え、今では柔らかい笑顔が日常の中で見られるようになった。


朝食を作る僕に、「ありがとう」とタメ口で話しかける雪菜。

彼女の言葉はまだぎこちないけれど、その温かさは本物だった。


「お兄ちゃん、今日はどこ行くの?」


不意にそう呼ばれ、僕は少し照れながら答えた。

「散歩でもするか。久しぶりに公園に行こう。」


雪菜は嬉しそうに頷き、耳がピクピクと動いた。

その仕草が可愛らしくて、僕はつい笑ってしまう。


公園で並んで座る二人。

雪菜は僕に向けて穏やかに笑いながら言った。


「こんな日が来るなんて思わなかった。でも、今は生きていてよかったって思えます。」


その言葉に、僕は深く頷いた。

彼女の紅い瞳には、もう過去の影はなかった。ただ、温かい未来が映っていた。


それは、壊れた心が繋がった二人の新しい日常の始まりだった。



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「紅い瞳の少女」 ruki @xxrukixx

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