名状しがたき魅力を感じる、奇妙な料理の物語

 読み始めた段階から、妙にじわじわと引きこまれる、不思議な魅力を持った作品です。

 「自分は料理から生まれた」という自己紹介をする飯沼悟。
 そんな彼がA級でもB級でもない「S級料理」という幻の料理たちを紹介し、それのレシピやエピソード、レビューなどを記していくことになる。

 そこに出てくる料理の数々が、なんとも幻想的な感じがあったり、奇抜すぎて「これは無理だろ!」と感じさせるものがあったり、とにかく面白い。

 それぞれの料理には物語があり、それを作った人間たちのなんらかの想いが込められている。
 そうした数奇な物語が不可思議な料理と共に紹介されていく。

 このような料理探しの旅の果てに、この物語がどこへ向かうのか。そうした興味も尽きないしし、個々の料理の内容やエピソードもとても面白い。

 「ここにしかない味わい」が随所に秘められた、とても可能性を感じる作品です。