目蓋の星

@hiro_ayano

目蓋の星

どうしようもない私が歩いている。

気づけば1人になっていた。

見慣れた風景がどうにも苦痛で、

雑踏に耐えきれず、私は走り出した。


気づけば通りすぎる冷たい風。

あの日の思い出を通りすぎて、

目に刺さる光を背景に、

僕は走り出していた。


お金も地位も名誉もないし、

僕がここにいた証しもなくて、

見たことも聞いたことない、

知らない山道を歩いていた。


缶コーヒーやアルコールが、

無造作に捨てられていて、

先人の思いを馳せながら、

どこも同じだなと考える。

白い息を吐きながら、

懐かしいあの曲を口ずさみながら、

自分自身さえも理解せぬまま、

僕は両手にロープを持ってる。


僕は誰かに見てほしかった。

誰かに指示されないと生きていけない。

君は大人なんだからと、

1人を強制された。


そんなのはわかってるんだ。

自分でも理解してるつもりだった。

でも積もり積もった思いが今、

僕の体を動かしていた。


だから先人の居場所を探して、

やっとたどり着いたこの道。

空き缶とゲーム機を見つけて、

やっと救われた気になった。


ふと木から落ちた雫が、

僕のほほを伝って落ちていった。

この両手のロープをくくりつけて、

落ちてく雫を眺めていた。

この先待ち受けることなんて、

もうどうでもよくなっていた。

霞行く視界となくなっていく過去。

僕は幸せになれないんだ。


目蓋の裏に映る星と共に、

やっと自由になれた。

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