第3話 心の羽ばたき

SNSを始め、執筆を続ける中で、私は少しずつ「自分の居場所」を見つけつつあった。家庭の中では決して得られない安心感、自由、自分らしさ。それらを感じられる場所が、画面の向こうにあった。


それでも、日常の現実は変わらない。家に帰れば、怒鳴り合いの声が響き、私の存在は薄い膜一枚で隔てられた空間に閉じ込められる。執筆やSNSの活動は、まるでその膜に小さな穴を開けて、息を吸うための手段だった。けれど、いつかその穴を大きくして、自由に空気を吸える日が来る――そう信じられるようになったのは、私が発信する言葉が誰かに届いている実感があったからだ。


SNSで繋がった人々の中には、同じように親の過干渉や家庭の問題に悩む人も少なくなかった。「私も似たような状況です」「あなたの言葉に励まされました」といったコメントが届くたび、私は自分の発信に意味があると確信するようになった。私が感じてきた孤独や痛みは、私だけのものではなかった。それを知ったことで、私の心は少し軽くなった。


さらに、私は気づいた。SNSや執筆は、単なる逃避ではない。それは、自分を守りながら新しい未来を切り拓くためのツールだった。文章を書き続け、それを発信することで、副業としての可能性も見えてきた。小さな収益でも、自分の力で得たものは、これまで親の支配下で与えられることしかなかった私にとって大きな意味を持っていた。それは「自分の力で生きられる」という初めての実感だった。


私がここで発信し続ける理由は明確だ。このエッセイが、今の私と同じように苦しむ誰かに届くことを願っている。家庭の問題に閉じ込められている人、逃げ場を見つけられない人に、少しでも「あなたは一人じゃない」と伝えたい。そのために、私はこれからも言葉を綴り続けるつもりだ。


もちろん、環境を変えるのは簡単ではない。両親が変わることは期待していないし、すぐに自由を手に入れることも難しいだろう。それでも、私は小さな一歩を積み重ねていく。エッセイを発信すること、共感を集めること、そして少しずつ自立のための準備を進めること。それらを繰り返す中で、私の心は確実に羽ばたき始めている。


閉ざされた家の中で生きてきた私でも、希望を見つけることができた。その希望はまだ小さな光だけれど、それを絶やさないように守りながら、私はこれからも前に進んでいきたいと思っている。


このエッセイが、どこかで同じ苦しみを抱える誰かの光になりますように。


おわり

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閉ざされた家から、心の羽ばたきへ 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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