最終話 未来への希望 ~幸村の遺志を継ぐ者たち~
大坂夏の陣が終わり、世は徳川の支配下に落ち着きつつあった。竹林院は、大坂から京都へと移送され、二条城の一室に身を置いていた。かつて豊臣秀吉が築き、後に徳川家康によって改築されたこの城は、権力の象徴として、その威容を誇っていた。
冬の冷たい空気が張り詰めるある日、竹林院は家康との対面を命じられた。華やかな障壁画、磨き上げられた廊下が続く城内を進むにつれ、竹林院の胸中は複雑な思いで満たされていった。幸村を失った悲しみ、今後の不安、そして家康に対する畏怖…。
広大な庭園を望む広間に通された。庭は一面真っ白に雪で覆われ、静寂が空間を支配していた。部屋の中は暖かく、豪華な調度品が並べられていたが、竹林院の目には、それがどこか冷たく、威圧的に映った。正面の奥に、徳川家康が静かに座っていた。その背後には、金屏風が立てられ、徳川の権力を誇示しているようだった。周囲には、重臣たちが控えている。
家康は静かに竹林院を見つめた。「そなたが、真田幸村の妻、竹林院か。」
竹林院は深く頭を下げた。「はっ…そのように…」
家康は重々しく言った。「幸村は、まこと見事な武将であった。わしを大いに苦しめた…だが、その勇猛果敢な戦いぶりは、賞賛に値する。」
竹林院は顔を上げ、静かに答えた。「幸村様は…己の信じる道を貫き通したまで…」
家康は深く頷いた。「その通り…ゆえに…そなたと、そなたの娘、そして幸村の子たちには、不自由のない暮らしを約束しよう。幸村の血筋は、後世に残さねばならん。」
その言葉に、竹林院は感謝の意を表した。「かたじけのうございます…」
その後、阿梅は家康の意向を受けた片倉重長に嫁ぐことになった。「お父様の血を…未来へ…」阿梅は決意を新たにした。
一方、隆清院は、竹林院とは別の場所で、幸村の冥福を祈り続けていた。彼女は豊臣秀次の娘であり、幸村の側室として、御田姫と三好幸信を産んでいた。大坂の陣の後、彼女は幼い子供たちを守りながら、静かに暮らしていた。
数日後、竹林院は二条城の一室から、降りしきる雪を眺めていた。庭は一面真っ白に覆われ、静寂に包まれていた。雪はしんしんと降り続き、庭の木々や建物を白く染め上げていく。
(幸村様…)竹林院は心の中で呟いた。(この静けさの中で…私はあなたを思い…そして…あなたの遺志を胸に生きていく…)
二条城の華やかな装飾、冷たい空気、家康との対面…。様々な記憶が胸に去来する中、彼女は静かに呟いた。「幸村様、あなたのご遺志は、私たちが受け継いでおります。」
(阿梅は…幸村の血を未来へ…そして…隆清院も…あの子たちを守りながら…生きている…そして…家康様は…この都で…この国の行く末を見守っている…この雪のように…全てを覆い隠し…新たな時代を築こうとしている…)
竹林院は、窓枠に積もる雪を見つめた。白く清らかな雪が、全てを覆い隠していくように見えた。それは、過去を覆い隠し、未来への希望を暗示しているようにも見えた。
(私たちは…生きている…幸村様の分まで…そして…この激動の時代を…この都で…この雪の中で…未来を見つめて…)
**竹林院の生涯(端的な整理)**
出自・生年: 不明。出自についても諸説あり、はっきりとしたことは分かっていません。
真田幸村(信繁)との婚姻: 真田幸村の正室(もしくは側室)となり、娘の阿梅を産んだとされています。幸村との婚姻時期も定かではありません。
大坂の陣: 大坂の陣(大坂冬の陣・夏の陣)では、幸村と共に大坂城に籠城したと考えられます。幸村は夏の陣で討ち死にしました。
大坂落城後: 大坂落城後、竹林院の身柄は徳川方に引き渡されました。その後の消息については、史料が少なく、明確なことは分かっていません。
没年: 不明。
大坂燃ゆ ~幸村を支えし女たち~ 懐かしの磁気ネックレス @sara_itsuki
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かえりたい/aoiaoi
★48 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
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