パパ活をしているギャルに遭遇してしまい注意をしたら、その子とパパ活をすることになりました
フィステリアタナカ
パパ活をしているギャルに遭遇してしまい注意をしたら、その子とパパ活をすることになりました
「雑誌コーナーに無ければ、もう品切れですね」
僕はバイトで貯めたお金を持って、大好きなアイドルが表紙をかざっている雑誌を買いに書店へと来ていた。そしてお目当ての雑誌を探したが見つからず店員に聞いてみると、どうやら売り切れてしまったみたいだ。
「そうですか――次、いつ入荷しますか?」
「雑誌なので取り寄せになります。一週間ほどかかると思います」
「わかりました。じゃあ取り寄せます」
「では――」
店員が出した用紙に連絡先など必要事項を書いていく。もっと早く来ればこんなことしなくてよかったのに。
「これでお願いします」
書店から出て残念だなという気持ちのまま家へと帰る。帰っている途中で、知っている人物が中年の男性と歩いているのを見てしまった。
(京子って人だよな。確か――、噂は本当だったのか)
クラスにいるギャルの一人、京子と呼ばれている明るく茶色い髪色の女の子がいた。噂でパパ活をしているという話を聞いていたが、まさか本当だったとは。
一緒にいる男の特徴を見ていると、彼女と目が合った。彼女は驚いた顔をしてから何食わぬ顔で男に話しかけている。どうやら僕は凄い現場に遭遇したみたいだ。
(見ちゃいけなかったのかもしれない)
◆
「ねえ、ちょっといい?」
休み明けの月曜の放課後。僕は京子さんに話しかけられた。
「あんた、このあと時間ある?」
「うん。大丈夫」
「じゃあ、ついてきて」
彼女にそう言われ、後についていく。たぶんパパ活のことだろう。短いスカートを見て、どう答えればいいか言葉を探していた。
「ここ開いてるか?」
連れてこられたのは使ってない空き教室。彼女に促され教室に入ると、扉がしまった。
「あたしの名前知ってる?」
「京子って名前しか――」
「あんたの名前は?」
「前田です」
「前田ね。下の名前は?」
「和弘です。あの京子さん?」
「京子でいいよ」
「えーっと、京子さんは僕に何の用?」
「あんた一昨日の土曜何してた?」
「雑誌を買いに本屋に行きました」
「他には?」
「他にはって――」
「他に何か気づいたことないの?」
ここは正直に言うべきであろうか。嘘をついてもしょうがないか。
「京子さんが、禿げた中年の男性と歩いているところを見た」
「やっぱり――」
正直にいうと彼女の目がキツくなった。
「あんた学校には言わないでよね」
「何で?」
「学校にパパ活がバレたらヤバいってわかるでしょ?」
「パパ活やってるの? それなら止めた方がいいよ」
「はぁ? あんたあたしに説教するつもり?」
「説教も何も、京子さん自分の体大切にした方がいいよ」
「あたしはウリはやってない。一緒にご飯を食べてデートするだけ」
「そうなんだ」
「口止め料払うからこのことは黙ってて」
「口止め料なんていらない」
「はぁ? あんた言うつもりなの?」
学校に言う? それとも言わないでおく? その場でどう判断すればいいのかわからなかった。
「学校に言うかどうかは別として、絶対にパパ活は止めた方がいいよ」
「はぁ――ちょっと手を出して」
「手?」
意味がわからずに手を前に出すと彼女はその手を左手で掴み自分の胸に持って行った。
「口止め料、揉んでいいよ」
「えっ? おっぱい? ちょっと柔らか……」突然のことに驚いていると彼女は掴んだ手とは別の手を使いスマホで写真を撮った。
「はい~、セクハラ。証拠写真バラされたくなかったら、どうすればいいかわかるよね?」
「なっ!」
何てことをするんだ。これじゃ僕は生徒指導の先生に怒られてしまう。
「京子さん、ずるいよ」
「ずるいとか関係ない。とにかく黙ってて」
納得できなかったが了承するしかなかった。
「わかったよ」
「ならよろし。ほれ、サービス」
京子さんはそう言うと短いスカートを捲り上げ、僕に見せつけてきた。
「どうだ~、女子高生の生パン。あー、童貞君には刺激が強いか」
その行動があまりにも衝撃的で僕は固まってしまった。
「じゃ。そういうことで」
そう言って彼女は教室から出ていった。
◆
学校からの帰り道、今日の出来事を思い返していた。「何で彼女はあんなことをするんだろ? お金が欲しいならバイトすればいいのに」そんなことを思っているとバイト先のカラオケ屋から連絡が来た。
「もしもし、前田です」
「前田君、今からバイト入れるかい?」
◇◆◇◆
(ふふ。ちょろいちょろい)
あたしはクラスメイトに自分の胸を揉ませ、写真を撮って脅した。あの滑稽な顔、今思い返しても笑える。
(今日、あのオヤジ二万くれるって言ってたから、男ってバカだよね)
一昨日の土曜に会った中年の禿げたオッサン。「倍払うから、また会ってくれ」だなんて本当カモだわ。今日もこれから会って軽ーく稼がせてもらうわ。
「おー、お待たせ。京子ちゃん、待った?」
「そんな待ってないよ。今日はどうするの?」
「どこか食べに行こうか? 行く場所はこっちで決めていいかな?」
「いいよ~」
ちょっとキモい禿げオヤジだけど、リピーターになれば、ふふふ。あたしはどこか浮かれた気分で街を歩いていた。
「おう、久しぶり」
知らない男が声をかけてきた。二人組だ。「ナンパかな?」そう考えていると、パパ活相手の禿げオヤジが言った。
「おう、久しぶりだな。何してんだ?」
「これから俺達カラオケ行くんだ」
「そうなのか? 男二人で?」
「そうなんだよ。お前は何しているんだ?」
「見ての通りさ」
「へぇー、そうなの。じゃあさ、俺達と一緒にカラオケ行かない?」
「いいねぇ。京子ちゃんもカラオケなら行くよね?」
意味がわからない。今日はデート何じゃないの? この男達邪魔でしょ?
「えーっと――」
「悩む時間もったいないから、行こうか」
お金を貰うし、ここは従うしかないか。でも本当にいいのかな。
「オレいいところ知っているから、ついてきて」
禿げオヤジと知らない二人組の男と一緒にカラオケ屋へと歩く。向かった先はこの町で一番大きい三階建てのカラオケ屋だった。
「いらっしゃいませ」
「四人部屋より大きな空き部屋、三階にある?」
「少々お待ちください――禁煙ルームの302と喫煙ルームの309が空いてますがどうなされますか?」
「309で」
「わかりました。では会員カードを」
「無いから作って」
「わかりました――では、この用紙に記入を」
二人組の片方の男は横柄な態度で店員に言う。「会員カード作ってないんだ」何か引っかかるものを感じたが、気にせず部屋へ向かうことにした。
「京子ちゃん、ここ、ここ」
カラオケルームに入ると禿げオヤジがここに座れと自分の左側に来るよう促す。言われた通りに左側に座ると、あたしの左側には横柄な態度を取っていた男が座った。
「この子、おっぱいが大きくていいでしょ」
禿げオヤジはそう言い、あたしの肩に腕を回し、いきなり胸を揉み始めた。
「はっ? 何してるんですか!」
「何ってデートでしょ?」
「デートって食事に行く話でしたよね?」
「そうだっけ? まあいいじゃん、みんなで楽しもうよ」
あたしが焦っていると、横柄な態度を取っていた男がスカートの中に手を突っ込んできた。
「はぁあ? 何やってんだオッサン! 汚い手で触るな!」
「汚い? ちゃんと手を洗ってきたぞ」
「そうじゃなくて止めろって!」
もう一人の男を見ると、彼は扉の前に立っていた。きっとあたしを逃がさないようにするためだ。
「止めろって!」
抵抗するが男の力は強い。なすすべもなく胸を揉まれ、大事な部分も触られる。何で。何でこうなるの?
「あんた達グルで最初からこうするつもりだったんだ!」
「そうだぞ。二万払うんだから、その分サービスしてもらわんと」
「聞いてない! あっ、止めて!」
「いいでしょこの子、Hカップですよ。今まで彼氏がいたことないんだって。ね、京子ちゃん。初めてはおじさん達が優しく教えてあげるよ」
最悪だ。このまま三人にやられちゃう。
『学校に言うかどうかは別として、絶対にパパ活は止めた方がいいよ』
今日初めて話した前田の言葉を思い出し、あたしの目には涙が浮かんだ。
「イヤだって言ってるでしょ!」
「パパ活ってね。こういうこともするんだよ」
◇◆◇◆
「休憩終わります」
「前田君、今日はすまないね」
「いえ、大丈夫です」
「ホント、前田君には助けられてるよ――そういえば前田君の高校の女の子が来てたよ」
「そうですか」
「男三人と一緒に来たから、前田君サービスする? 君の奢りで」
「奢りって――ちなみに男ってどんな高校生でしたか?」
「高校生じゃないな。臭そうなオヤジだったよ」
「お客さんに臭そうなオヤジだなんて――」
「おっ、しまった。私としたことが」
「店長なんだから、しっかりしてください」
えっ? 臭そうなオヤジ?
「店長。その女子高生ってどんな感じの子でした?」
「明るい茶髪だったな。いかにもって感じ。そうそう巨乳だった」
イヤな予感がする。もしかしたら京子さんじゃないか? パパ活で男三人と一緒って聞いたことがない。
「店長、ポテトチップスをサービスしようと思うんですけど、いいですかね?」
「前田君の友達? それなら奢りじゃなくてもいいよ」
「ありがとうございます」
部屋に入るのに不自然じゃないようポテトチップスを準備する。そしてバイト仲間に彼女がいる部屋の番号を聞いた。
「309ですね。ありがとうございます!」
早足で彼女がいる部屋へと向かう。部屋の前に着くと、扉の向こうに男が立っていて入り口を塞いでいるように思えた。僕は「よし!」と気合を入れ、部屋の扉を開けた。
「失礼しまーす。お待たせしました、ポテトチップスです」
扉を開けて男が立っている視界の奥には、制服のシャツが脱がされ下着もずらされている京子さんの姿があった。「不安が当たった」そう思っていると彼女と目が合い、彼女は声をあげた。
「前田! 助けて!」
「注文なんかしてないぞ。さっさと行け!」
「お客様、当店でこの様な使い方はご遠慮いただいております。警察に通報しますので、しばしお待ちください」
「はぁあ? てめぇ!」
「店長も私がここにいるのを知っています」
男達に殴られる前にそう言い、男達がこれ以上何もできないよう試みた。
「ふざけんな! もういい、帰るぞ」
荷物を持って男達は部屋から出ていく。部屋に残ったのはあられもない姿の京子さんだけだった。
「前田……」
「だから言ったでしょ。パパ活はダメだって」
京子さんは泣きだした。僕はバイトの制服を脱ぎ、彼女にかけてあげた。
『はい』
「すみません、309にいる前田ですが」
『前田君? どうしたの?』
「応援で女の人に来てもらえませんかね?」
『何かあったのか?』
「ありました。詳しいことはそっちで話します」
『わかった。誰かそっちに行かせるよ』
「お願いします」
この後、京子さんに僕のバイトが終わるまで待ってもらうことにした。彼女は元気なく黙っている。店長は厄介事だと感じたのか、この事に関して深く追及はしてこなかった。
「前田君、お疲れ様。今日は助かったよ」
「いえ、助かったのはこっちの方です――あのー、部屋代は?」
「サービスだ。帳簿の記録に残したくない」
「ありがとうございます」
「まあ、いろいろあると思うが頑張ってな」
「はい店長。じゃあ、そろそろ上がりますね」
京子さんは今日のことでショックが大きいだろう。彼女はうわの空だったので、僕は彼女を家まで送り届けることにした。
「大変だったね」
「うん」
「でもよかったよ」
「……」
会話が続かない。そうだよな。だってまともに話したのは今日が初めてだもの。
「ここが京子さんの家?」
「そう」
京子さんの家はアパートの一階にあった。
「じゃあ、京子さん。またね」
僕がそう言って帰ろうとすると、彼女は僕の服を捕まえた。
「どうしたの?」
「
「ん?」
「――らないで」
「何? 京子さん」
「怖いから帰らないで」
ああ、そうか。あんなことがあったから一人でいるのは怖いよな。
「親は?」
「夜遅いかも……」
「そっか」
僕はスマホを取り出し、家族に連絡する。
「――もしもし。和弘だけど。うん。今日バイトが急に入って、いろいろあって帰るの遅くなる。うん、そう――何かあったらまた連絡する。――じゃあね」
とりあえず連絡よし。これからどうすればいいか京子さんに訊くことにした。
「京子さん、いちおう大丈夫になった。これからどうすればいい?」
「とりあえず上がって」
「わかった。お邪魔するね」
僕は京子さんの後に続いて家の中に入る。すると京子さんは僕の顔を見ずにお願いをしてきた。
「シャワー浴びるから見張ってて」
戸惑った。急にシャワー浴びるとか言い出すから、放課後の空き教室の件が頭の中をよぎった。もしかして――、
「怖いから、シャワー浴びている間に帰らないでね」
ああ、そうか。「また誰かに襲われたら」そんな恐怖を今感じているのか。僕は彼女の願いを聞き入れ、彼女がシャワーを浴びている間、部屋の中でスマホをいじることにした。
『前田』
「うん、ここにいるよ」
『後でお礼するね』
「お礼?」
『下着姿を見せるでいい?』
「いやいやいやいや、それはいいって」
『何? 見たくないの?』
「うーん、見たくないって言えば嘘になるけど……」
『はは、冗談だよ。前田はエッチだな』
「どっちがだよ」
京子さんがシャワーを浴びている間、ずっと彼女と話をした。たぶん一人きりだと感じないように彼女は僕に話したのだろう。シャワーの音が止んだ後、彼女が脱衣所で着替えているのがそれとなくわかった。
「前田、ありがとう」
「どういたしまして」
彼女は僕の前に姿を現す。その表情はどことなく不安げな表情だった。
「前田――」
「親が帰って来るまでいた方がいいよね?」
彼女はコクリと頷く。
「わかった。あっ、夕飯どうしようか?」
「あたし作るよ。前田も食べて頂戴」
「えっ、いいの?」
「当たり前だろ」
「じゃあ、遠慮なくもらいます」
◇
「あたしさ」
「うん」
夕飯を食べながら彼女と雑談をする。
「大学行って大学生活っていうのをしたくてさ」
「そうなんだ」
「入学金とか生活費とかお金かかるでしょ」
「そうだね」
「バイトじゃ貯まらないと思ってたから、パパ活やってたんだ」
「そっかぁ」
「何年か働いてから、大学へ行くことも考えたんだけど、ちょっと周りと年が離れるでしょ? それもどうかなって」
「うん」
「パパ活で何とかなるだろって――でも、舐めてたから今日みたいなことが起こったんだなって」
「うん」
彼女なりにいろいろと思うところがあったんだな、そう思った。
「これからどうしよう」
「これからって、お金のこと?」
「うん」
「親には相談したの?」
「相談してない」
「じゃあ、まずは相談するところからじゃない?」
そう言いつつも僕自身、自分の将来について親に話をしていないな。
「そう思う? あたしこんなんだからさぁ。親が呆れてるかもって思って」
「仮に呆れていたとしても、進路のことなんだから真剣に話を聞いてくれるよ」
「そっか」
「そうだよ」
夕飯をごちそうになり、しばらくすると京子さんのスマホの音がなった。彼女は画面をみて確認をしている。
「あと二十分くらいで親が帰って来る」
「二十分か――」
「うん、だからもう大丈夫」
「ホントに?」
「大丈夫」
「わかった。じゃあ、そろそろお暇するね」
◇
「じゃ、帰るね。また明日、学校で」
「今日のお礼必ずするから」
「そんなのいいって」
「あたしがしたいの」
「――わかった。じゃあ、お礼楽しみに待ってるね」
こうして僕と京子さんの濃度の濃い一日が過ぎ去ったのだ。
◆
翌日。昨日のことが何事もなかったかのように、京子さんは友達のギャル達と話をしながら楽し気に過ごしている。これからも学校で彼女と絡むことはないんだろうなと思いながら、彼女たちの様子を眺めていた。
「ねえ、ちょっといい?」
放課後。もうそろそろ帰ろうとするとき僕は京子さんに話しかけられた。
「このあと時間ある?」
「うん。大丈夫だよ」
「じゃあ、ちょっとこっちに来て」
何だろ? と不思議に思いながら彼女の机の傍まで来ると、彼女はカバンから何かを取り出し僕に渡した。
(パパ活月間無料パス?)
「これ何?」
「お礼。今月いつでも好きな時に使っていいから。あたしが相手じゃ不満かもしれないけど」
「うーん。デート券みたいなもの?」
「そうだね。でもパパ活だから前田の望むデートをしてあげるよ」
「どんなデートでも?」
「うん。じゃなきゃお礼にならないでしょ? あっ、でもエッチなやつは追加料金ね」
彼女はいたずらっぽく笑った。
「そっかぁ。残念」
「じゃあ、パンツ見せるまでは追加料金取らないであげる」
「別にそんなのいいって」
「何? 見たくないの?」
「見たいか見たくないかっていったら――」
「ふふ。バーカ、変態」
「自分から振っといて、酷い言われよう」
(このデート券どう使うかな。あっ、そうだ)
「じゃあ、早速だけど今日図書館デートしない?」
「図書館デート?」
「そう。一緒に勉強して大学進学を目指そう」
「まじめかっ!」
今まで接点のなかった女子と仲良くなったことで僕の高校生活はガラリと変わった。この後、夏祭りを期に「パパ活月間無料パス」が「パパ活年間無料パス」に変わったことは、また別のお話。
パパ活をしているギャルに遭遇してしまい注意をしたら、その子とパパ活をすることになりました フィステリアタナカ @info_dhalsim
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