歯車
堺透明
第1話 歯車
僕は、真っ暗な夢の中でひたすら走り続けた。何かに追いかけられているわけでもない。ただ、何かに逃げて逃げてその先に何もないことがわかっていても逃げた。
僕は、立ち止まり後ろを見た。
「な〜んだ・・・」
僕は、何かを後ろで光何かを見て納得した。
そこで、僕は目を覚ました。
現実世界の僕は、負け組確定コースである。
大学は、Fラン。仕事もブラック企業。生活力皆無で彼女なし。体重は、今も増量中。
僕は、何をやってもダメダメな人生である。毎日の口癖は、『死にたい』である。
『未来に希望がないのだから、自殺しても神に許されるよね。』
そんなことをいつも感じながら、働く。
「何やってんだ。修正しろ。」
上司は、いつも怒鳴って心臓に悪い。メンタルは、ヒビで割れた使えないコップだ。水を入れることすらできない。今の時代、セクハラだのモラハラだの言えるのかもしれないが言えない企業だってある。
「はい、直してきます。」
「次は、まともにしてこいよ。」
『僕は、理不尽の中に生きている。』
そう感じている。辞めようにも勇気がない。周りの目を気にしすぎて前に進めない。
僕は、いつものように残業の仕事をして夜遅くに帰る。街は、静かになりこの世界に僕だけが取り残された気分になる。
『人生やり直したい』
その言葉は、逃げてきた僕にとってなんも希望のない話である。
家に着き次第、決まって同じアニメを見る。そんな時間は、ない時でも。
アニメの世界は、僕をその世界に導いてくれる勇逸の逃げ道である。
『異世界転生なんてできるはずもないのに、僕は信じ続けている。』
ある意味中二病の部類に入るかもしれない。
『人生は、孤独であり勇敢に立ったものが英雄となる。』
それは、好きなアニメの主人公の師匠が言った言葉だ。この言葉に、心が動いたわけでもない。ただ、この言葉が何重にも重なって頭の中に響く。
「希望もない世界で勇敢になんて無理だろ。」
『勇敢に戦う場所さえあれば、僕だって・・・』
アニメの中の主人公は、勇敢に戦う。深手を負わされながら勝つ時がある。その時、主人公はいつもこういう。
「人生は、最後までたっていたもん勝ちだ」
僕は、この言葉でなぜか割れたコップに水が注がれる感じがして何度も見直してしまう。
『僕には、希望がない。それでも最後までたったものが勝つ。そうありたいといつもこのアニメに勇気をもらっている。』
「寝よう。」
僕は、感動という心を大事にして寝る。
夢の中・・・。
「君は、どうありたい。」
アニメの主人公が聞いてくる。
「僕は、本当は夢を叶えた人生にしたい。」
「なら、人生戦って最後まで諦めるな。」
「僕は、弱い・・・。」
「それでもいい。次、戦うことに意味がある。」
「その夢に逃げてしまうかもしれないんですよ。」
「別に逃げたっていい。だけど、もう一度向き合えるかどうかが一番必要なんだ。」
「僕は、変われるでしょうか。」
「さぁ、前に進んで立て。」
僕は、目を覚ます。その日に、突然だが会社を辞めた。
数年後・・・。
ある雑誌の取材中。最後の質問。
「勝ち組に乗ったあなたが、一番世間に伝えたいことはありますか。」
「僕は、希望もない人生を送ってきて死にたいと思うことが日常でした。だけど、アニメの主人公に出会うことができて、人生はどういうことなのかを学びました。もし、現在同じ立場なら自分を突き動かしてくれる何かに出会うことが大事だということを希望のない人に伝えたいです。」
歯車 堺透明 @kasa123
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