第4話 異世界

「何だ?ここは一体どこなんじゃ……?」

ワシは今しがた死んだはずじゃないのか……?

先程まで狭い部屋で床に伏していたというのに。それに身体もとても軽く痛みもまるで無く息苦しくもない。

目を開けて辺りをよく見回すとお栄も弟子達も周りに誰もおらん。それになんだ見たことも無い奇妙な格好をした奴ばかりがあちらこちらに居りワシの方をじっと見ておる。着物も着ておらず誰も髷を結っておらん。それに女の髪も変な形で茶色をしておる者もいる。

何故彼らはわしを不思議そうに見ておる。

何なんだこの光景は……?訳が分からん。

そして後ろの方から何やら大きな声が聞こえてくる。立ち上がり振り向くと目の前に何やら大きな建物らしき中央に薄くて四角い箱の中に人が入っているのが見えた。

「何じゃ、あの薄くて四角い箱の中に人が入っておるのか?まるで浮世絵の中から出てきたような……」

目を細め、薄い箱の中の男が何を言っているのか、じっと耳を傾けた

「本日9月23日のニュースをお伝えします、現在の渋谷の様子は……」

箱の中の男が言っていることはほとんど分からんがおそらく今日は9月23日なのか。よく見るとあの薄い箱の隅の方をよく見てみると2024年と書いておる。辺りの壁を見ると何やら令和六年と書いてあるおそらくこれは元号なのか?今は嘉永2年ではないのか?

それからふと視界の隅に写った池に目をやり近づいてみる。

「若返っているではないか!それに髪も黒く皺1つ無い!若い頃のワシではないか!」

髪を何度も触り確認してみるが髷は無いが確かに掴めるほどに生え揃っておる。顔もピンと張りがあり皺が1つも無い。

よく見ると腕や足も腹もやせ細っておったのにしっかり肉が付いている。

唯一変わっていない物はワシが今着ている着物だけだ。



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画狂老人卍転生奇譚 矢車寝子 @yaguruma_neko

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