第3話 一色未来
「あ゛~っ俺って本当に漫画家に向いてんのかな……」
声が全身に響くのを感じながら、その場で思い切り息を吐いた。某ファミレスのソファ席に着きながら周囲に憚られるとも気にせずにだ。それぐらい落ち込んでいたからだ。
思い起こせば始まりは7歳の時だった。
父の部屋にたまたまあったマンガを手に取った時にそこに描かれた見開きのページのセンスと画力の衝撃で心が震え鳥肌が立った。今でもあの時の事は鮮明に覚えている。あの瞬間、俺の心に火が灯ったのだ。
あれから13年、頑張って俺は2浪してこの春からようやく憧れの江戸藝術大学、通称'エドゲイ'に入学したというのに。この半年、俺の大学生活は聞くに堪えないくらい酷いものだ。入学して早々にサークル勧誘で、年下の奴ともろくに目を見て話せず、そのまま孤立してしまった。周りの学生たちが楽しそうに笑い合う中、俺だけが一人、ソファの隅に追いやられたような気分だった。
思えば、俺は昔から学校に馴染めなくて、ろくに友達もいなかった。周りと話が合わず、付いていけない自分が嫌で、いつも心の中で孤独を抱えていた。高校1年の時にもマンガの読み切りを描いて応募したが、あの時は何も結果がついてこなかった。自分の作品が評価されることを夢見ていたのに、現実は厳しかった。
「俺は本当に漫画家になれるのか?」
そんな疑問が頭をよぎる。周りの友達が楽しそうに話す中、俺は一人、心の中で葛藤していた。未来の夢はどこに行ってしまったのか。孤独な思いを抱えながら、俺は再びペンを握る勇気を見つけることができるのだろうか。
デッサンの授業では、周りの学生たちが次々と素晴らしい作品を仕上げていく中、俺だけがいつも同じようなレベルの絵を描いている気がしていた。彼らの手元には、流れるような線や繊細な陰影があり、俺の描いたものはどこかぎこちなく見える。自分の絵を見返すたびに、劣等感が胸を締め付けてくる。
「どうして俺だけ、こんなに上達しないんだろう……」そんな思いが頭をよぎる。周りの笑い声が耳に入るたび、自分だけが取り残されているような気がして、心が苦しくなる。みんなが描く絵は、まるで魔法のように美しく、俺の絵はただの落書きに思えてしまう。
学校帰り、俺はいつものファミレスに立ち寄った。窓際の席に座り、目の前には冷たいアイスコーヒーが置かれている。周りには賑やかな声が響いているが、俺の心はどんよりとした雲に覆われていた。
「次の読み切り、どうしよう……」
頭の中でアイデアが渦巻いているのに、どうしても形にならない。ペンを持つ手は震え、思いつくのはいつも同じような展開ばかり。周りの学生たちが楽しそうに笑い合い、スマホをいじったり、友達と盛り上がったりしている姿を見ていると、ますます焦燥感が募る。
「俺だけ、こんなに苦しんでるのか?」
心の中で不安が渦巻く。自分の描きたいものがはっきりと見えない。アイデアが浮かばないまま、何度もノートをめくり、描いた絵を見返す。どれもこれも、他の人と比べると自信が持てない。自分の作品が、ただの落書きに思えてしまう。
「何でこんなにイライラするんだろう……」
思わず、アイスコーヒーを一口飲み干す。冷たさが喉を通り抜けるが、心の中のもやもやは晴れない。周りの楽しそうな声が耳に入るたび、俺の心はますます孤独を感じる。自分だけが取り残されているような気がして、苛立ちが募る。
「次の読み切り、どうにかしないと……」
そんな思いが頭をよぎる。ファミレスの明るい照明の下で、俺は再びノートを開く。周りの喧騒が気になりながらも、少しでも自分の理想に近づきたいという思いが湧いてくる。孤独な思いを抱えながら、俺は再びペンを握る勇気を見つけることができるのだろうか。
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