獲物を待つ狩人

梅崎幸吉

第1話

「獲物を待つ狩人」





水の湧き出づる小さな洞窟の岩陰にて獲物が網に張り付くのを

気配を殺して微動だにせずに待ち続ける狩人がいるのを私は時

を忘れて見入っているとその狩人も私の事を知りつつ逆に見詰

めているような気がしてきたがそれは私が観ているという意識

を私が意識したからであろうと思いながら凝視し続けていると

そこに小さな羽虫が飛んできて狩人の網を揺らしたが網には掛

からず微かに網が揺れただけだがその時に狩人は殺気を放ちな

がら一瞬一足微かに動いたが直ぐに気配を殺してまた微動だに

しない態勢となりてまた次の獲物を虎視眈々と狙うものへと何

事もなかったが如く静止し続けているのを私自身もその狩人を

観ている内に何やら妙な心持になり始めたのを感じたのだがこ

の先に私が狩人と同化してどのようになるのかという好奇心に

は抗えぬ想いとの奇妙なこの世にあらぬが如き妖しき心持が私

のこころと身体に染みわたり始めると微妙な振動が私の意志と

は裏腹に名状し難き痛みに似た想念が私の肉体を奮わせ始めた

のは極度の意識の集中と疲労からかは判然としないと考え始め

たら私は此処にはこれ以上この場所に居るべきではないとの想

いを感じつつその場を離れるべきであるとの想いが強く湧きた

ちて好奇心は残っていたものの私の足は意志を持っているかの

ように反応してその場を気配を消しつつ静かに移動し始めたの

である。


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獲物を待つ狩人 梅崎幸吉 @koukichi-umezaki

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