第5話


 王妃はまだホールには現われていなかった。

 自室で、友人の公爵夫人たちと談笑しているようだ。

 ロシェル・グヴェンが入って来る。

 彼が差し出したカードを見て、王妃は内容に視線をやった。

 数秒後、カードを彼に返す。

「いいわ。許します。貴方が案内なさい」

「……よろしいのですか?」

「いいのよ。いずれ案内しましょうと約束していたのです。構わないわ。私が、快く応じたとラファエルに伝えて。それで彼には全て伝わるわ」

「かしこまりました」

 ロシェルはそれ以上問答はしなかった。



◇   ◇   ◇



 階下に降りて行くと、ラファエルが振り返る。

「許可が出ました。参りましょう。私が案内をします」

「妃殿下にお礼を」

「妃殿下は快く許可をなさいました。貴方にはそう言えば、全てわかると。 お礼は改めて、後日なさるとよろしいかと」

「分かりました」

 ラファエルは上階に向けて、騎士の所作で深く一礼した。


「それでは、参りましょう。

【シビュラの塔】へ」





【終】

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