【魔法×SF×女主人公】魔法少女×バッドエンド&リボーン

新山田

第1話 運命と転生


耳に流れる音楽。


今の子はもう古いと言うのだろう。

でも構わない、私の人生に置いて重要な曲なのだ。


出会い、塾帰り、受験、別れ、面接、通勤、退勤──


「晩御飯は、何にしようかな?」


心地よいメロディーが耳を打つなか、私は街灯に照らされた家路をなぞる。


料理の中心は割引の総菜になってしまうけれど副菜くらいはなにか用意したい。と思うこの頃……まあぶっちゃけ年々戻らなくなってきた体重をどうにかしたいという思惑からくる、なけなしの対策だったりするんだけど。


加えて、足のむくみも疲れも年々取れるのが遅くなってきている。


「はあ~あ」


昔は年に一度の誕生日は待ち遠しモノだった。

でもいまは年を重ねる度にため息が増えている様に思う。


「せめて祝ってくれる相手がいればな……なんて」


まあ仕事に疲れすぎて”恋愛”する体力なんて残ってないんだけどね、たはは。

……それに、恋愛の先も見据えて、っとなると面倒になってくるものだ。


「時間は待ってくれないし、歳をとると出来る言い訳も減ってくる」


……生きているだけで肩身が狭いことこの上ない、と思う日々だ。



沈んだ気持ちに鼓舞するように音楽が響く。


いつも私の背中をそっと支え、押してくれるようなそんな感じ。

……いまはさしずめ、慰めてくれているような感じ、かな。


──カァン、カァン、カァン


遮断機が鳴り、赤い怪光が暗闇で輝いた。


「てめぇ!煩いんじゃ!」


千鳥足の中年男が、電車の到来を警告する遮断機に喧嘩を売っていた。

バーが下がり始めているのにドンドン近づいていく。


「俺は課長だぞ!言うことを聞かんか!」

「ちょっと!」

「うるさい!」

「課長さん、もう!いいから!」


線路に近付きつつあった男の手を取った。

必死しすぎて”加齢臭”も”酒気帯び”も気にしない。


「きゃッ!」


中年の力は思っていたより強く逆に引っ張られてしまった。

パンプスではどうにも踏ん張りの利かず足を滑らせる。


「あッ、っととt──」


──パァン……キィィィ……


煌々と放たれる光を一身に受けたとき自分の運命を終わった。


──その時、


「危ない!」

「え……!?」


強く腕を握られ引き戻された。

身体はその力に委ねられて気付けば……抱き絞められていた。


「大丈夫ですか?」


透き通る声に思わず顔を上げると、

今まで見た誰よりも奇麗な瞳をした端麗な顔があった。


白銀の長髪が靡き輝く様は星のようで、

彼の放つ存在感は暗闇の中でさえかき消すことは出来ないと思える。


……夢でないならこれが運命って奴かもしれない。と思う。いや信じる!


「えッ、あ、す、すいません。違う!ありがとうg──」

「……見つけた」

「あ、あの!近いです!」


腰に伸びた腕の力がより強くなったことで当然そのぶん顔が近づいている。


「ああ……運命の人。ようやく会えました、ようやく」

「ぇぇぇええええ!」


ううううううう、運命!これは、あっちも思ってたってことですかぁぁぁぁああ!


「ぐッ」


む、むねが苦しい。久しぶりの高鳴りに身体への負荷が強い……いや強すぎるぅ!


「わ、わたしも!その!……え」

「ようやく運命の人が、女王さまの命令を完遂することができるぅぅうう!」

「ちょ……ちょっとおち──」


あれれ、様子がおかしいよ、この人。

遮断機の光が反射しているせいなのか目がイっちゃってるように見える。


どうにかしないとやばいかも……あれ。


「やっと!やっと!やっと!やっと!やっと!やっと!やっと!」


痛い……。


「え……うそ」


冷たい……。


「やっと!やっと!やっと!やっと!やっと!やっと!やっと!」


濡れた腹部に触れた手が真っ赤に染まっていた。


「な……なん…で」


混乱、混乱、混乱。


「やっと!やっと!やっと!やっと!やっと!やっと!やっと!」


目の前の彼が叫ぶたびに、赤い鮮血が飛び散っていく。

目の前の彼が叫ぶたびに、意識が遠くになっていく。

目の前の彼が叫ぶたびに、私の身体は冷たくなっていく。


「奇麗な……ナイフ」


どうしてそう思ったのか、理由は分からない。


彼が片手に持つ装飾の施されたナイフのようなモノは、

赤くほんのりと色づいて化粧してるように思えた。


そして時折見せる白銀の反射光がとてもきれいで、

わたしはその魅力に……ずっと目を奪われていた。


◇     ◇     ◇


暗闇。真っ黒。目に漆を塗ったような、そんな感じ。


「なにここ!古い匂いがする!くっさ!」


でもすぐに目が慣れてきた。


どうやら私は、

大きな瓦礫があちこち散らばっているところにいるようだ。


空気中に舞うホコリを吸い込まないように手で口元を隠しながら前に進む。


「ここから外に出られそうね」


狭い空間を慎重に進んだ先で、

壁に空いた穴から少しだけ光が差すところを見つけた。


「分厚そうな壁ね……押せるかな?」


押して大丈夫なモノかも怪しいけど……でもこんなとこ一秒でも早く去りたい。


「んーっしょ、っと!」


──ガ、ガ、ガ。ガァァアアアアラララ!


思ったよりも簡単に動くぞ、と思っている間にどんどん前に。

勢いが増して、速度が増して、光のほうに道が開いた。


「……は?」


ヒンヤリとした肌が温かみを取り戻していく。

日差しが肌を触れるのがわかった。


「……」


喜びもつかの間、というか無いまま、私の前には、

とてもとてもたくさんの鎧を来た人で溢れかえっていた。


「だ、だれだ!きさま!」


目の前の鎧が声を上げる。

お互い様でしょ、とも思わなくはない。


けど……この状況は私から歩み寄らないといけないような気がした。


「私の名前はくd──」

「テック・ナイト諸君!剣を抜け!」


──ッザ!ビィィィン!


”テックナイト”と呼ばれた鎧の人たちは、

一斉に光の刃をもつ剣を取りだしてみせた。


「”この中から現れる者はすべて殺せ”と仰せ使っているのでな!」


全身鎧たちの中で兜の先端が赤い者が叫ぶ。


「”M・R・C”を起動!作戦を開始せよ!」


──ブゥゥゥウン


兜が目覚めたように光ると剣を構えて迫ってくる。


もう!次から次へと何なのよ!と、思いつつも、

どうにかしないとどうにもならないこの状況に思考を巡らす。


鎧の人たちは話が通じない……味方は居ない……私は裸、は、はだか!?


「んな!」


やっば、急に恥ずかしくなってきた。

……っていうか!


「見るなぁぁああ!近づくなぁぁああ!あっちいけぇぇえ!」


──ガッ、シッ!


「え……?」


迫る鎧たちが動きを止めて一斉に向きを反転させた。


◇     ◇     ◇


「ん?どうした?」


──……ピィッ、ピ


「ッち!」


紅い岩の絶壁に挟まれたその場所を見下ろしていた人影。

より分厚い鎧を纏った男は兜の中で苦虫を噛んだような顔をしていた。


「どうしたんですか?隊長!」

「どうやらあの痴女は面倒な相手のようだぞ……奴らは”魅了チャーム”状態にされたようだ」


兜の中に搭載されている視覚情報インタフェースで彼の鎧のみの機能”索敵情報表示機能”《ステータス》で読み取った結果を見て瞬時にその変化を把握した。


「チャームって……あの痴女が”精神認識変換コード”でも流したってんですか!この短時間に!」

「……そのようだ」

「ってことは”魔術師ウィザード”級のハッカーってことですね……マジか!」


驚く部下の余所に隊長と呼ばれた皺の入った年季な顔の男はすぐに命令を下す。


「敵はハッカーだ!内部コード”状態異常耐性M・DEF”を起動しろ!」

「「「「ハッ!」」」」


既にその影響下にある部下はどうにもできない。


「……古代の遺跡調査なんかで、まさか損失を出す羽目になるとはな」


軍隊の型落ちとはいえ、汎用型戦闘鎧オール・コンバットアーマーをいくつか無駄にすることになるのはかなり痛い。


……彼は既にその損失分の経費を数えていた。


「うへぇ~」


その独り言を隣で聞いていた部下は背筋を冷やしたのは言うまでもない。


◇     ◇     ◇


同じ鎧を着た者同士が戦いをしている。


「どうなってんのよ!」


目まぐるしく変わる状況のなかで理解できるモノを探す。


「はい!現在われわれは戦闘中であります!」


兜の先端が赤い全身鎧が声を張り上げた。


「うわッ!急におっきな声出さないでよ!」

「は!”姫様”申し訳ありません!」

「ひめ?」

「はい!そして!われわれは!貴方に使える近衛騎士ガーディアンです!」


……よくわからないけど味方ってことなのかな?


「え……えっと、じゃ、じゃあ、ここから逃げたいんだけど助けてくれる……かしら?」

「命に代えても遂行して見せましょう!」


そのようだ。


「ぜんえい!外部コード全機能全防御ゴーレムを起動!」

「「「はッ!」」」


その命令を受けて全身鎧が真っ黒に染まるのが見えた。


「作戦行動要人警護撤退V・I・P・Wを開始せよ!」

「「「はッ!」」」

「姫様!少しのあいだ、我慢してくださいませ!」


羽織っていたマントを外し私の肩に羽織ってくれた。


「?……ありがと、うッ!」


体を隠すのにちょうど良いサイズ感で助かった、と思った矢先、

身体を抱えられたまますごい勢いで跳躍したのだ。


「うあぁぁああおおお!ざ、ざ、ざむい!ご、ご、ごわい!降ろしてぇぇええ!」

「いまは辛抱です!しっかり捕まっていてください!」

「やぁぁぁぁぁぁぁああああああ!」


跳躍、跳躍、跳躍、跳躍、跳躍、以下略──


背後に見える土煙がどんどん小さくなっていくのがわかる。


「ここまでくれば大丈夫か──」

「ところがどっこい!そうはいかないんだよね~、っと」


──フィィィィィィィイン!!!!


空気を切り裂く音とともに白い鎧がやってきた。

目の前で止まり振り返ると私たちの行く手を塞いだ。


「軍用型強襲モデル-グリフォン、ベルトン殿ですか。さすがにあっさりと行かせては貰えないということですか……」

「そうだよ。僕も働かないと消耗品にされちゃいそうだし……」

「?」

「こっちの話。ッていうか……まだ解けないんだ”魅了チャーム”」

「真の愛は不滅なのですよ、ベルトン殿」


おいおいおい!愛って……おもてぇな!


「ははは!そうか!なるほどすごいもんだ……Lv40の上位職”騎士”に長時間の魅了を鎧のレジスト機能もすり抜けて掛けてしまうだなんて…キミはなに者だい?」

「……」


何者、と言われましても単なる社畜OLなんですが……。


「まあ言わないならいいさ。どうせ連れ帰って調べればいいわけだし」

「そうはさせませんよ」


私の横から二人の鎧が通り抜けると目の前の白鎧に剣を構えて突撃した。


「キミたちじゃ、ムリでしょッ!」


──ドォン、ドォン


「愛のせいで、時代はもうそれを捨てたのを忘れてしまったかい?」


白鎧が構える二丁の銃から放たれた衝撃からは命を奪う音がした。


全機能全防御ゴーレム起動!姫様を囲んでお守りせよ!」

「「「はッ!」」」


──ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン


薬莢が飛び煙が上がる。何度も、何度も、何度も、何度も。


「いいのかい?このままじゃ本隊が追い付いちゃうよ?」

「ぐッ……どうすれば」

「もういいわ、降参しましょうよ!」

「ダメです。聞いたでしょ?捕えられれば好奇心が満たされるまで”企業”に弄られ続けるのですよ!」

「でも」

「隊長……ここは”全機能全防御・囲陣ゴーレム・マント”でいきましょう!」

「……そうだな。次のタイミングは?」

「あと2発ずつです」

「分かった、幸運を祈る!」

「「「はい!」」」


──ドォン、ドォン、ドォン……


「……つぎ」


──ドォン


「いまだ……!」

「そう来るよね~、でも残念」


ジッと構える白鎧。


「僕が”幻惑”得意なの……忘れちゃった?」

「くそッ!」

「ほんと愛って奴は、ハハハ。隙間……みーっけた」


──ドォン……カツゥ


「!」

「うい~危ない危ない。間に合ったよかったゼよ」


慣れた様子で拳銃を回し銃口から出る煙を、フッ、と吹き消す。


「へえ~”バニット族”が人間さまの争いに何の用だい?」


その姿は──


「──ウサギ」


童話の中で語られる様な立ち姿。


……テンガロンハットにそれっぽい銃、カーボーイみたいできゃわわ!


「うい~その言い草……いいな悪役らしくて俺は気に入ったゼよ」


──やっべ、ウサギが喋ってるなんて可愛すぎて状況を忘れてしまってた。


「ウサギもどきの感想なんて聞いちゃいないんだけど、ね!」


装填、撃鉄、発射、と目にもとまらぬ一連の動作。


「俺に”早撃ち”勝負なんて本気かい、あんた?」


──バチィィィイン


彼らの間で何かが弾けた。そして──


「──ぐあッ!」


白鎧は強く肩を押されたように態勢を崩した。


「二発だ」

「はあ!?」

「アンタが一発撃つ間に、俺は二発撃った」

「そりゃ、装填までしてたn──」

「そんなこすい真似、俺はしねぇゼよ」

「クソg──ぐあ!」

「辞めねぇ、ってんなら容赦なく、撃つぞ」

「クソ!」


白鎧は銃を捨ててウサギに向かって突進した。

翼のようなモノが背中から伸びて噴射して一気に加速する。


「”ソレ”は時代遅れじゃなかったかい?」

「はぁぁああ!」


ビーム状の刃の剣が迫る中で悠長なウサギ。


「……時代は変わっても、まあ俺もソッチのが好きゼよ」


ウサギは、腰に隠れるように在った片刃の剣に手を掛ける。


「居合い”脱兎ビ”」

「うそ……だ」


光の刃が折れる、と同時に倒れる白鎧。


「……死んでない」


駆け寄った鎧が息を確認した。


「ならどうして倒れているんだ……?」

「二回ゼよ」

「え?」

「……剣を斬り、キミのうなじを強く打ち付けた」

「な、なるほど」


状況はようやく落ち着きを取り戻していくような気がした。


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