作者様の作品は一通り読ませて頂いておりまして、その作風、完成度の高さは理解していたつもりでしたが……。
こ れ は す ご い !
この物語は、ただひたすらに、愛に満ち溢れています。
何気ない会話、緊迫のシーン、日常の風景、そしてエンディングに見えた景色。
作品への愛、登場人物たちの愛、それは恋愛は勿論のこと、ただ人を思いやる愛や、愛するという感情。
そういったものが、心を鷲掴みにしてきます。
こういうのを、ため息が出るような美しさ、と表現するのでしょうか。
9000文字程度。
その読みやすい文字数に込められた深い愛の物語。
是非、堪能して欲しいと思います。
戦いの傷が癒えぬまま、少年は過去から逃れようとしていました。けれど、その道の先で彼を迎えたのは、温かさとどこか歪んだ優しさを併せ持つ青年でした。
アオイは、ただの保護者ではありません。時に甘やかし、時に冷静に見つめ、ナズナが自ら歩むための道を用意していきます。戦闘能力も高く、少年を守るためなら、ためらいなく力を振るいます。アオイの圧倒的な魔力を前にすれば、権力も契約も意味を持ちません。しかしすべてを奪い取ることなく、ナズナ自身が選ぶまでただそこにいる。その姿に揺るぎはありません。
ナズナも次第に変わっていきます。過去の痛みを抱えたまま、それでも前へ進もうとします。アオイに守られるだけの存在でいたくないという気持ちが、彼の歩みを加速させていきます。
戦いの果てに何を選ぶのか。どんな道を進むのか。それは彼ら自身が決めること。けれど、その選択がたとえ別々の道だとしても、どこかでまた交わる予感を残したまま、物語は続いていくことでしょう。