モブキャラの俺が男嫌いで有名な推しの百合達に挟まった末路。彼女達はデレデレになった挙句、逃れられない甘やかしバブみ沼へ引きずりこむ

第1話「僕は今度こそ推しキャラの百合カップルを救う！」

　僕は死んだ。大好きだったアニメ化した百合ゲーがバッドエンド。ショックすぎて意識を朦朧としてるところ、電車に轢かれた。

　その僕は転生する。百合ゲーム『フォレストカラーズ』そっくりな設定世界。

　この世界での名前は板倉雷電（いたくら　らいでん）。アクション漫画のラスボスのような名前だがモブキャラだ。

　ゲームではクラスメイトAとさえ出てこない端役というかエキストラキャラクター。おふざけで設定集にプログラマーのペンネームをそのまま流用していることが判明。それだけどうでもいいキャラだ。

　それでも俺にはこの世界でやらなきゃいけないことがある。大好きなキャラクター達がいるからだ。

　目的は推しキャラの伏見野稲穂（ふしみの　いなほ）と永妻恋夏（ながつま　れんげ）を応援してくっつけること。

　伏見野は男嫌いのクールな女子。悪女ではないが全てに興味がない。事故で両親を無くし飼い猫も病気でなくす。本人は助かったが飛び降り自殺経験あり。それ以来人生を諦めており自暴自棄でドライ。

　攻略キャラじゃないが存在感があり、悪役キャラながら一、二位の人気を誇る。　

　永妻は父親が蒸発、母親が悪い男にひっかかるなど過去の凄惨な経験から男装になり、酷い歩みを知った父親が失意の中死んだせいで闇落ちして何もかも信じられなくなり悪女になる。

　二人共悪役だが本当は良い子なんだ。

　しかも幼馴染みで想い合っているのにゲーム中結ばれることはない。

　シナリオだとトゥルーエンドで主人公の邪魔ばかりした報いで、最後は追い詰められて両思いだと気づき二人とも海に飛び込む。あれは悲しかった。

　だから僕は大好きな二人が幸せになって欲しくて陰ながらサポートを決意。

　幸い中高一貫校の学園。ゲーム開始の二年前なので悪堕ちしないようシナリオ改変を試みる。　

　まずは伏見野。人生のテコ入れをする。元々優しかった性格を激変する原因になった飛び降り自殺を未然に阻止。病気で死にかけた飼い猫を助けて彼女を踏み留めさせる。

「放っておいて！」

「そういうわけにはいかない」

「もう最後の家族であるあの子がいない世界に興味がないのよ」

「人生をそんな簡単に諦めるな。両親はお前に未来を託したんだぞ。それにまだ猫を生きている」

「嘘」

　僕はビデオ通話で動物病院にいる猫を伏見野へ見せた。

　元気はないが峠を超えたのでウロウロしている。

　猫を観てくれたのがヤブ医者だったという設定だったので、腕の良い医者を探し出し再診察してもらった。結果はこの通り。

「に、にゃん太郎⁉　……よかった。かかりつけの先生にもう助からないと診断されたから」

「お前は一人じゃない。永妻もいるし僕もいる。これからどんな悲劇的な運命が襲ってこようとも力で捻じ伏せてやるよ。だからお前は希望の明日を生きろ！」

　伏見野は泣き崩れながらうんうんと頷いた。

　このあと永妻が駆けつけビンタのあと抱き合う。

　これで伏見野も人生諦めたり、投げやりなドライな性格にもならないだろう。

　続いて長年苦しんでいた永妻を救う。

　最近様子がおかしかった永妻。原因は親父さんからの手紙。

　蒸発した片親から連絡来た時は末期癌で明日をもしれない命だった。　

　家庭を滅茶苦茶にした元凶、意固地になり拒絶する永妻を何とか説得して病院へ。ここがおかしくなるターニングポイントだから退かない。

　その結果、蒸発した真実を聞き、結局死んだが永妻のわだかまりは消えて闇落ちを防げた。

　葬式の帰りだろうか、下校中喪服に袖を通した永妻が、「ありがとう。本当に後悔せずに済んだ」そう頭を下げられた。

　永妻はゆっくり昔話を語る。

　男嫌いになった原因は父親が女を作って逃げたこと。そしてシングルマザーとして弱りきっていた母親が悪い男にひっかかり、そして永妻達姉妹にも手を出そうとして守り殺害。今も刑務所の中だ。

　以来、残された妹を守るため男装をするようになる。

「板倉君にはお礼言い切れないよ。君のおかげでお父さんの最期に立ち会うことができた」

「俺は大したことしてない。ただ永妻の背中を押しただけだ」

「うんん、そんなことない。男性でこんないい人いたんだね。男なんて女の顔と身体のことしか興味がない欲望まみれのクズ野郎だと誤解していた」

　こそばゆいがこれでシナリオが改編 されて闇堕ちしないはず。これから本来の永妻と伏見野で学園生活を謳歌してくれ。

「昔からのクラスメイトだ。永妻の笑顔を守るためだったら、僕は何度だってピンチになる度、その背中押してやるさ」

　二人の推したる百合を守るためならば……。

　まぁ、二人とも男嫌いだからもう相手にしてくれないだろうが。でもそれでいいんだ。二人が幸せになってくれるのなら。気味悪がられても味方でいる。それが推し活さ。