第5話 “雪の精”の真実

 冬休みの最後の日、外は大雪だから行きかう人も少ないだろう……


 私は意を決して、目出し帽にサングラス、マスク。マフラー、コートに手袋と、完全防備で家を出てNPO法人の事務所へ向かった。


 ノックをしても返答の無いドアを開けて中に入ると、人の姿は無いが部屋は温かく、確かに誰かが居た気配がする。


 点きっぱなしのパソコンには集まった寄付金の収支が表示されていて、それらはすべて真っ当に送られていた。


 じゃあ! 何で??


 その奥に潜む“真実”を覗こうとマウスのボタンに指を掛けると、いきなり誰かに羽交い絞めされて隣の部屋に引きずりこまれた。



「その様子じゃ、あなたもすっかり私達の“仲間“ね」


 私を羽交い絞めしているその手は“透明な“葛餅のようで……血管や筋肉や骨が人体模型よろしく丸見えになっている。


「だから、私達の前ではそんなに着込まなくても大丈夫よ!」


“聞き覚えのある”二人の声に私は震撼する。


「佳代さん!を下さいな」


 佳代さんとおぼしき白い手袋の指から落された茶色の金平糖は、目の前で開かれた筋肉と血管が投影されている手のひらの上を転がっていく。


 それらひと摘まみがマスクで覆われた口の中に消えて行くと、手のひらはスーッと不透明な肌色へ戻った。


「あなたも金平糖が欲しい?」


 佳代さんの声に私は夢中で頷く。



「では、今から私達と“布教活動”をいたしましょう! 皆さんに雪輝茸をお勧めして、私達には不可欠な“上質の”メラニン色素を収穫しないとね」



 こうして“雪の精”たる私達は……降り積む雪をもろともせず、“布教活動”に勤しむのだった。




                              終わり


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雪輝茸(せっきだけ) 縞間かおる @kurosirokaede

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