発砲までの30秒

 はあっ、はあっ、息が切れる。さしもの俺も絶体絶命。このままじゃ到底持つまい。

 クソッ。死ぬのか俺は。こんな薄汚い路地裏で。


 あの女に手を出したのが間違いだった。まさかボスの愛人とはな。あっちから近付いてきたんだ。あのクソビッチが。


 ――あそこだ。あの家に押し入ろう。住人には気の毒だが俺は俺が生きるので精一杯なんだ。

 どうしようもなくなったらこの銃を使えばいい。……と思ったが、


「いたぞ!」


 呆気なく囲まれちまった。


 アハ、怖い顔。


 あー、無駄汗かいた。

 銃をつきつけると追手もさすがに足を止める。


「銃を下ろせ」


 おやお前さん、情に訴える顔もできるのか。

 まあいいだろう。だが捨てる気はない。


 こうやってな、自分の頭に突き付けるんだよ。


 それで、引き金を引いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

読了までの30秒 藤堂こゆ @Koyu_tomato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ