生命よ、少し話をしましょう
私は、守人ですが、いつも遠くから見ているだけではありません。
子供の産んだ存在。孫のような存在である彼らを、わたしはこよなく愛しています。せっかく見出したのに、忘れて諦めてしまったこの感情。心の高鳴り。これを愛しいというのでしょう。だから、私は生命体を愛しています。
愛すから。彼らを愛すから、私は彼らに干渉します。愛しくて、でも不思議な存在の彼らに。
彼らは、なぜ生きているのか。なぜ数を増やすのか。なぜ、限りある生の中でもがくのか。
生命体の姿に扮して、近くで見てきました。ですがその答えは浮かびません。だから、私は多くの生命体に問いました。
なぜそなたらは生きるのか。すると多くのものはこう答えます。
わからない。
ある生命体の言葉を借りるのならば本能、という衝動で生命体は動くそうです。生きたいとか、食べたいとか、そういう感情は本能で決まると私は聞きました。
本能。死んでいった祖先の産物。結局は彼らはなぜ生きるのかは知らないそうです。祖先からの唯一の産物に縛られていきていると言います。
私は、そんなわけがないと思いました。だから新しく生まれた最も聡明な生命体に尋ねました。その生の意味を、私の子供が授けた産物を、誰一人として説明できないというのは悲しいことだからです。
すると、その生命体の種類の中でも特に聡明なものが、私の問いにこう答えました。
「幸福、を追求することためです。それが生きる意味です」
「なぜ?」
「幸福、はとても美しいものだからです。生を持つ者に与えられた特権です。幸福を求めるために人は生まれました。だから生というのは人が幸福を求めるためにあるのです」
「なぜ、幸福は美しいの?幸福を得られない生命は意味がないの?」
私は問いました。彼は黙りました。なぜでしょう。誰も答えてくれません。私は他のものにも問いました。ですが納得のいくものは得られません。
「生命は大切なものです。だから大切にしなくてはなりません。生きなくてはならないのは、生きることが素晴らしいことだからです」
「なぜ?」
「周りの人が悲しんでしまうからです」
「周りの人もみんないなかったら?生命は本当に大切?自分しか見ないものが、そんなに大切?」
「周りの人がいないなんてことはありません」
昔、本当に最初に生まれた生命は一人でした。でも、生きました。繁栄を目指しました。
誰も、その答えを知りません。生きることの意味を誰も知らず、だけれどなんだかいきたいから生きています。
生きたいから生きる。
そこに理由はないのかもしれません。彼らにとってそんなことはどうでも良いのです。それ以上の理由は必要ないのです。
本能という贈り物。祖先の祖先のまた祖先。そんな存在が残した厄介な贈り物。
なぜ、私たちは生きるのでしょう。
私も、子供たちも、他の集落の人たちも。生命も。そもそも生きるとはなんなのでしょうか。私たちは、生きているのでしょうか。
私はずっと頭を悩ませました。ですが、答えは出ませんでした。
だから、私は逃げます。生命から。その曖昧な存在が恐ろしく見えて。
今、生命は存在しません。私が守ることをやめたからです。他の星々のせいで、あの星は壊れました。隕石の衝突。隕石のうちに内包されていた未知の病原体。生命体は死にました。なくなりました。動かなくなりました。
醜いから、私は遠ざけます。
これを愛というのでしょうか?私は生命体を愛せていましたか?
また、私は諦めました。昔のように。感情も、考えることも。
いや。少し違うかもしれません。本当はなかった幻想を一時の間思い出していただけです。
今では、とても生命を祝福できる気がしません。良い旅を、送れなかったでしょうから。最期だけは、幸せでありますように。
もりびと ぼっちマック競技勢 KKG所属 @bocchimakkukyougizei
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