第2話:二人のティルピッツ

 眼前の女性が微笑んだことを、しばらく呆けて見つめていたアルフレートは、何かにようやく気づいた様相で、女性の名前を尋ねることにした。だが、その直後に交わされた会話は、驚愕すべき情報であった。と、いうのも……。

「あの、失礼ながら……お名前は?」

 名前を尋ねられた女性は、今気づいたそぶりをして自慢げにこう言い放った。それは本来ならば、相手方にとって重要にして極めて意外な名前である、そう言いたげに。

「……ティルピッツよ」

 そして、アルフレートがどう驚くか、といった様相で様子を見ていたが、アルフレートにとってそれは特に驚くべき情報ではなかったのか、あるいはよく見聞きした情報であったのか、こう返答した。

「奇遇ですね、僕もティルピッツです」

 アルフレート少尉、正式にはアルフレート・フォン・ティルピッツ少尉。階級以外はかの伝説の海戦を勝利に導いた提督と同じ名であるそれを、大層気に入っていたのか、自慢げな彼女に対して、朗らかに、何の気負いもなく、自然に告げた。

 そして、驚くのは計画では本来驚かせる側であるはずの彼女の方だった。

「えっ、か、閣下!?」

「……閣下?」

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遠き縁の恋人  =二人のティルピッツ= Kurz Ausführung エトーのねこ(略称:えねこ) @H_Eneko

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