トイレ〇花子さんの、お正月!

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

 僕は西園寺歌麻呂、僕の嫁さんはトイレ〇花子さんだ。花子さんは、今は西園寺華子という名前になっている。勿論、出会いはトイレだ。小学生の時、学校のトイレで僕は華子をトイレから引きずり出した。華子があまりにも美しかったので、僕は将来の嫁にしようと家に華子を持ち帰ったのだ。それから、順調に愛を育み、僕が社会人になると華子と結婚した。子宝にも恵まれた。男の子と女の子だ。名前は華麻呂(はなまろ)と美華(みか)。



 華麻呂が7歳、美華が4歳の時、華麻呂が駄々をこねた。


「お母さん、僕、お母さんの実家に行きたい。田舎に行きたい」

「お父さんの実家にはよく連れて行ってるでしょう」

「お父さんの実家は飽きた。田舎じゃないし。近所だし」

「そう言われてもねぇ」

「僕、お母さんの実家に行きたい」

「えー! なんで?」

「みんな、お父さんの実家にも、お母さんの実家にも行ってるよ。みんな、田舎に行くんだ。僕はお母さんの実家に行ってない」

「私の実家に行っても、お祖母ちゃんやお祖父さんはいないのよ」

「それでもいい! お母さんの実家に行ってみたい」

「歌麻呂、どうしよう?」

「連れて行く?」

「え! マジで? マジで言ってる?」

「いやぁ、1度連れて行ったらわかってもらえるんじゃないかな」

「えー! あそこに行くの? 家族で?」

「華子だって、僕と喧嘩する度に“実家に帰らせていただきます”って言って、あそこに帰ってるじゃないか」

「うーん、そうだけど……落ち着くけど、親戚がいるわけでもないし」

「でも、このままだと華麻呂が納得しないだろう?」

「華麻呂、どうしても私の実家に行きたい?」

「うん! 1度は行きたい」

「つまらないところだけど、我慢出来る?」

「うん! 大丈夫だよ」

「歌麻呂、じゃあ、行きましょう」

「1度は行くしかないね。1度行けば、華麻呂も華子の実家に行きたいとは言わなくなるだろう」

「はいはい、行きましょう」



 数時間後、正月休みの小学校の3階トイレに座布団を敷いて座っている家族がいた。誰がビックリしたかというと、警備員さんがビックリして腰を抜かした。



 それから、“3階トイレに座っている西園寺一家”というのが、学校の7不思議に加わった。







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