別れた元カノに復縁を迫られる話

高月麻澄

深夜の自室、突然部屋が明るくなり、目を覚ますと――。

あっ、起こしちゃった? ごめんね。


――うん、涼子だよ。久しぶり。


そろそろ会ってもいいかなって思ったから来ちゃった。


「どうやって?」って。普通にカギ開けて玄関から入ってきたけど?


――うん、そうだね。確かに、別れた時にもらってたカギは返したよね。


でも、君は知ってると思うんだけど、私心配性だからさ。


失くしても大丈夫なように合カギ作っておいたんだ。


そっちは「返して」って言われなかったから、持っておいたの、ふふっ。


……やだなぁ、そんな顔しないでよ。


久しぶりの再会なんだよ? もっと喜んでよ。


私はずっと君に会いたかったのに。


――は? 「俺は会いたくなかった」?


……ひどいなぁ。


せっかく、カノジョと別れた君を慰めてあげようと思って、こうして来てあげたんだよ?


――うん? 知ってるよ? 君のことならなんでも。


君が私と別れたあと、すぐに違う女と付き合ったことも、その女に振られたことも。


ずっと見てたもの。別れてからもずっと、君のことを。


だって、私は君のことが大好きだから。今でもね。


本当は別れたくなかったんだよ?


君が土下座してまで別れてくれっていうから、別れてあげたけど。


それで、どうだった? 浮気してた女と恋人になってみて。楽しかった?


――え? ……あはっ、言ったじゃん。君のことならなんでも知ってる、って。


知ってたよ、もちろん。君が浮気してたことも。


バレてないと思ってたんだよね。ふふっ、驚いた顔しちゃって……かわいいなぁ。


それで?


――「なにが」じゃなくて。その女と恋人になって楽しかったか、って訊いてるの。


――ふーん……楽しかったんだ。


でもそれなのに、ある日いきなり振られたんだよね?


『別れて』っていうメッセージだけ送られて、理由も教えてもらえずに。


私、その理由知ってるけど……教えてほしい?


――知りたいんだ。じゃあ、教えてあげる。


あの女も『浮気』したからだよ。


まぁ、私がそうさせたんだけどね。


――「どういうことだ」って?


私が浮気されて振られたから、君にも同じ目にあってもらおうと思って、あの女にもしてもらっただけだよ?


私のがちょうど女の子欲しがってたからさ。


あの女、最初のうちは「別れない」ってかたくなだったのに、一日経ったら泣きながら「別れる」って言いだして。


たった一日の間に何があったんだろうね? あははっ。


――うん? どうしたの? 怖い顔して。


なんで怒るの? そもそも君が浮気したのが悪いんだよね?


君が浮気しなかったら、あの女もさせられる羽目になんてならなかったのにね? あははははっ。


……そんなわけだからさ。


あの女とも別れたし、そろそろ私とやり直してもらおうと思って、こうして会いに来てあげたんだ。


ね? 私とやり直そうよ……だめ?


やり直してくれたら、浮気してたことも許してあげる。


君のこと、いっぱい愛してあげるよ?


君のためなら、なんでもしてあげるよ?


ねぇ、だめ? 私ともう一回恋人になろ?


――そっか、だめなんだ。


はぁ……ほんとは君にこんなことしたくないけど……だめならしょうがないよね……。


――「なに、それ」って……見たことくらいあるでしょ、スタンガンだよ?


ほんのすこーし弄ってあるけど……大丈夫、死にはしないから。


――あはっ、怯えた顔もかわいい♡


安心して、君がまた私と付き合おうって思ってくれるように、私がんばるから。


あぁでも、浮気した罰は与えなきゃだから……ちょーっと辛い目にあってもらっちゃうかもしれないけど。


あはははははっ、どんなことされるか楽しみだね?


それじゃあ、おやすみなさい。愛してるよ♡

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