非行少女
じゃせんちゃん
オチたくない
少女はグレていた。
生まれつき体格が良く発育も良い若さゆえ有り余るパワーと、荒れた家庭環境で居場所が無くたまるストレスや鬱憤を吐き出す為に毎日喧嘩に明け暮れている。
初めのうちはスカッとした気分になっていたが次第にそれだけでは満たされず、結局は虚し空っぽの日々を消費している様に思いながらも惰性で喧嘩を繰り返す。
つまらない
つまらない
毎日がつまらない
少女は気だるげに今日も街を練り歩く、いっそのことこんな自分をメチャクチャに壊してくれる誰かを探しているかの様に。
人気の無い薄暗い路地をぶらぶらと歩いていると数人の男たちが少女を取り囲む。
「お前が最近この辺りで暴れ回っている女だな?」
絵に描いたようなゴロツキ達がニヤニヤと笑いながら声をかけて来た。
「噂で聞いていたよりも良い身体してるじゃねぇか、これなら直ぐにへばってダメになる事も無さそうだな」
男達がまるで品定めでもしているのか、絡みつく様な視線を少女へ向ける。
「ゲヘヘ喧嘩よりももっと良い事を教えてやるから一緒に遊ぼうぜ、俺達全員でお前をトバしてやるよからよ」
リーダー格の様な男が少女を誘う。
半ば自暴自棄になっていた少女は男達の誘いを受け入れ路地裏の奥へと消えていく。
数日後
「ハァハァハァ、ふぐぅ、ッツ、ハァハァハァ」
少女は汗だくでドロドロになりながら荒い息を吐き、頬が火照り胸を弾ませながら忙しなく身体を動かし続けている。
『どうだ、気持ち良良くて最高の気分だろ?でもそろそろ限界の様だな、無理せずにオチちまえよ』
少女の様子を見ているリーダー格の俺の声がスピーカーから流れてくる。
「ハァハァハァ、まだ、全然平気よ、これくらいでオチたりなんてしないんだから」
少女は断続的に痙攣を起こしてもはや自分のものでは無い様な身体に鞭打って動きを止めない。
『全く強がりな女だぜ、オイ次はデカいぜ覚悟しろよ』
リーダー格の言葉と同時に少女に大きな衝撃が走る。
「嫌だ、嫌だ、オチたくない!嫌だ、まだ終わりたくない!」
それでも少女は食いしばり必死で持ち堪える。
『大きな突風を物ともせずに、たった今大会新記録へ達成しました!グングンと距離を伸ばしあります』
会場である湖に響くアナウンスと共に観客達は歓喜の声を上げる。
こうして少女は表彰台で男達と共に『人力飛行機コンテスト』の優勝トロフィーを受け取った。
「どうだった?喧嘩よりも空飛ぶ方が気持ち良かっただろ」
「うん、すごく良かった」
最高の仲間と共に自分の居場所を見つめた少女は和かに笑う。
その後少女は『飛行少女』として一役有名となったのだ。
非行少女 じゃせんちゃん @tya_tya_010
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