The end of fantasy life memories chronicle of the dead online(通称:デッドエンド、又は、でっエンド?)

麻田 雄

批評 その1


 家庭用ゲーム機がモニターという枠を捨て、はや十数年――


 世の中はVRやARという段階を経て、とうとう完全な仮想現実世界を作り出す事に成功した。


 空想科学でしかなかったフルダイブ型VRMMOの時代が幕を開けたのだ。


 それまで不具合の多かった”五感”をフルに使う事が出来るVRMMOだが、脳の発する微弱な電波を細かく分析・計測・測定し……(以下略)

 要するに、そうなったのだ。


 モバイル通信回線では難しかったという背景もあり、それらを楽しむためには据え置きタイプの専用ゲーム端末が必要不可欠となった。


 長らく虫の息だったコンシューマーゲーム業界は新たなプラットフォームの誕生により息を吹き返した。

 各社、持てる技術の全てをつぎ込み、開発に尽力した。



 そうした礎のもと、数多の作品が生み出される事となった。

 コンシューマーゲーム業界は大いに盛り上がりを見せた。

 多くの名作が生み出され、栄華を築いたといっても過言ではない。


 しかし、”光”が生まれれば”影”もまた生じる。



 ……つまりは”クソゲー”である。



  ◆  ◆  ◆



 『The end of fantasy life memories chronicle of the dead online(ジ エンド オブ ファンタジーライフ メモリーズ クロニクル オブ ザ デッド オンライン』(通称:デッドエンド、でっエンド?)


 タイトルからして香ばしいと、発売前からスレ民の関心を集めていた本作。


 単にタイトルだけが問題だった訳では無い。

 制作・販売は数多の迷作を生み出してきた『world champ soft』。

 おのずとスレ民の期待は高まっていった。



 本作は”仮想世界での人生”をメインテーマとして掲げていた。


 このゲーム内での時間は現実世界の十分の一程度で進行していく。

 つまり、現実世界での一日は仮想世界での十日。

 (※注 途中までは)スキップ機能は無い。

 現実世界と時間軸がリンクする事により没入感が高まるのは頷ける。

 また、躍起になってプレイせずともオート(放置プレイ)モードも実装されている為、忙しい社会人にも優しい設計となっていた。


 そこだけを切り取れば、あまり違和感を覚えないかもしれない。

 だが、それこそがこのゲームの狂気の始まりともいえる……



 本作はRPG……。


 RPGとは――

 『参加者が各自に割り当てられたキャラクター(プレイヤーキャラクター)を操作し、一般にはお互いに協力しあい、架空の状況下にて与えられる試練(冒険、難題、探索、戦闘など)を乗り越えて目的の達成を目指すゲーム』である。


 フルダイブ型ハードではその没入感は別格であり、まさしく仮想現実と言えるだろう。

 だが、本ゲームではメインテーマを尊重しすぎた為(なのか?)、”RP(ロールプレイング)”の部分が抜け落ちてしまっていた。

 ……いや”G”の部分もなのかもしれない。


 異常なほど細かく作成可能なアバターを作成した後(真面目に制作すると作成だけで数時間は掛けられる。この時点で断念するプレーヤーも多いと聞く)、プレーヤーを待っているのは完全なる”無”だ。



 プレーヤーには何の役目も与えられず、ただ”誕生”する事になる。


 更には結構な時間を掛けて作成したアバターは一度無に帰す事となる(正確には特徴を残した乳幼児になるのだ)。

 作成したアバターは”開始時に設定した”年齢での姿でしかない(低年齢設定でアバターを作成した場合は、徐々に成長し老いていく)。

 こういった、一見して凄い作り込みにも思える部分も「仮想世界なのに現実を突きつけられる」と不評であった。


 確かに、長時間をかけて作成したアバターが”なかなか使えず、期限付き”とあっては「ならそんなに作り込みさせんなよ!」と文句を言いたくなるプレーヤーの気持ちも理解できなくはない。



 アバターの問題はさておき、ゲー”無”の部分に触れていこう――



 前述した通りこのゲームを始めた段階では何の役割も与えられていない。

 単なる乳幼児としてスタートする。

 そこには、特殊な境遇や、持って生まれた使命なども何も無い。


 プレーヤーが動き回れるようになるには平均して二週間~一ヶ月程度掛かる(あくまで平均値)。

 ログインしていないと発育が遅れ、もう少し時間が掛かる事となる(ここで出遅れると後の進行の妨げにもなる)。

 それまでずっと、プレーヤーはバーチャルリアル赤ちゃんプレイを強いられることとなるのだ(余談だが、一部スレ民からはこの部分がクライマックスだという意見もある)。



 そうした苦難?を乗り越え、待っているのはNPC達との共同生活。

 現実世界で例えるならば、保育園や幼稚園と言える場所に送り込まれる。


 つまり、最初の地獄である――


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The end of fantasy life memories chronicle of the dead online(通称:デッドエンド、又は、でっエンド?) 麻田 雄 @mada000

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